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□日常の中の非日常
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今日は珍しくベッドに横になりながら大人しく読書をするしんのすけを横目で見ながら、学校で出された課題を解いていた。
あっそびましょ〜〜〜っと訪ねてきたしんのすけに課題があるから帰れと言って今の現状。
何時もなら課題があろうとなかろうと、しんのすけは自分勝手に僕にまとわりつく。
それなのに、今日は怖いほど大人しかった。
『何があった?』なんて心配したような言葉を吐けば自分に不利な状況に陥る気がしてそれを飲み込んだ。



一頻り課題を片付けて椅子の背もたれに身体を預けながら伸びをすると、ベッドから布の擦れる音がして顔を横に向けるとしんのすけと目があった。

「何?」
「課題終わったの?」

じっと見つめてくるしんのすけに声を掛けると、首を傾げながら聞いてきた。
僕より身長もあって身体つきもごついあいつが首を傾げる姿があまりにも似合わなくて思わず苦笑を洩らした。

「あぁ、今終わった。何して遊びたいんだ?」

そう言えばへにょんと言う言葉がしっくりくる笑い方をしたしんのすけが、軽く床を蹴り僕の腰回りにまとわりついてきた。
本当にどうしたんだよと思いながら小さくため息をつき、脱色されたその髪の毛を撫でると似合わない上目遣いで僕の方を見た。

「ねねちゃんがね?」
「うん?」
「あんまりべたべたしてるとそのうち愛想尽かされるわよって…」

そう言って悲しそうに歪めた顔を再び僕の腰に埋めた。
昔からバカだったけど、本当にしょうがない馬鹿だなって思いながらその頭をなで続けた。

「人の言葉に惑わされるなんてお前らしくないじゃないか」
「だって…最近トオルは俺の事ほったらかしなんだもん」
「だもんって、お前高校生にもなってそんな言葉使うなよ」
「好き。すごく好き…だから嫌われたくなくて…でも、我慢するの辛かった」

そうだろうな、と思いながら撫でていた手で軽くその頭を叩いた。
不思議そうに顔を上げたしんのすけに思わず笑って、その硬めな頬を抓りあげた。

「ひたいよトホル」
「お前はお前のままで良いんだよ、今更性格を変えようったって出来る訳がないだろ?それにお前に邪魔されても課題は終わる。僕を誰だと思ってるんだよ」

抓った手を離すと、少し紅くなったその頬を自分の手でさすりニッコリ笑ったしんのすけの顔が近付いて軽く唇が触れ合った。

「トオルは幼馴染で頭が良くて綺麗だけど可愛い俺の恋人様」
「何だそれ」

そう言って笑うとしんのすけも笑みを深めてもう一度顔を近づけてきた。
触れ合った唇の温もりを感じながら、目を閉じるとその唇に新たな温もりを感じてうっすら唇を開いた。
ゆっくりと入ってきたそれに舌を絡めとられながら深く口づけをし、しんのすけの首筋に腕をまわした。
椅子からずり落ちる様にしんのすけの太腿に座り、息継ぎを繰り返しながら床へと寝かされてようやく唇が離れた。
お互い浅い呼吸を繰り返しながら見つめ合い、何かが切れた様に再び重なり合った。

「お前はそのままでいろよ」
「トオルのおおせのままに」
「バーカ」

二人で笑い合いながら、互いの体温を感じた。
そんな日常のほんの少しの非日常。



おわり

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