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□敵わない相手*
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「しん、のすけっ勉強……っ…」
「勉強内容は保健体育ね」
「ば、んんっ」
しんのすけが勉強を見てほしい何て言うからわざわざ家まで来たのに、今日は皆出掛けてていないと笑顔で言われてベッドに押し倒されてしまった。
僕だって別にしんのすけとするのが嫌な訳じゃない。
でも、しんのすけの家族は僕の家族とは違って何時帰ってくるのか予測がつかない。
耳元でピチャッと水音と生暖かい感触に力が入らなくなる。
昔からの付き合いであるしんのすけは僕の扱い方を熟知している様で、どうすれば上手く流されるのかをさらりとやってのける。
だいたい、中学生の時までがっつり女好きだった筈のこいつが僕の事を好きだと何で宣ったのか未だに分からない。
しかも恐ろしい程自分に素直な部分は高校に上がった今でも変わってなくて、僕が通う高校に押し掛けて所謂愛の告白を告げられた訳だが、あれに僕の拒否権なんてあったか定かじゃない。
「ぁ…はっ、しん、のすけっ」
ズボンもパンツも脱がされて僕の股間を触るイヤらしい手付きに戸惑いなんて見られない。
寧ろ、荒くなっていくしんのすけの呼吸が興奮しているのだと教えてくれている。
首筋や乳首に這う唇と舌。全く嫌悪感を抱かない僕もどうかしているし、昔の事を思うとあの頃の延長上成り行きで………という感が否めない。
「か、ざま…くん。俺を見てよ」
「んっ……ぁは…み、てるだろ」
そう言ってみるがフルリと否定された。
「何か、考え事してるでしょ」
ニッコリ笑いながら僕を見据え、しんのすけの顔が近付く。
反射的に目を閉じるが一向に感じない温もりを不審に思い開いた。
近距離にあるしんのすけの顔にドキッと高鳴る心臓を誤魔化すために横を向くと、不意打ちでぐちゅと入り込んできた指に声が漏れた。
「見て」
「し…の、すけっ!」
覆い被さるしんのすけの唇が僕の唇に触れて、目を閉じると離される。
目を開けと言われているようで、下から感じる快感に眉間を寄せながらじっとしんのすけの顔を見ていた。
「ふ…んっ……ぁ」
「可愛い……」
中を広げられる感触と、舌に絡みつく感覚に視界がにじむ。
しんのすけのシャツをぎゅっと掴み下肢を押しつけると、じゅるっと指が抜かれた。
「風間くん…入れるよ?」
「…んっ」
コクンと何度も頷きながら自分のからしんのすけの唇を押しつけると、下肢に触れる温かくて固い物。
思わず唇を引き結ぶとそれを解す様に舌が滑り込んできた。
鼻から呼吸していると入り込んでくる圧迫感。
「んんっ…んっ!」
入り込んでくるしんのすけの物が感じる部分を掠めて思わず腰が戦慄く。
唇が離された頃には二人とも酸素不足で息が物凄く荒くなっていた。
「は、あ…動くよ」
その言葉通り一気に抜かれてそれをまた押し込まれる。
身体中にゾクゾクと快感が駆け巡り甲高い声が漏れた。
接合部分から聞こえる卑猥な音と自分の出す声に興奮してズンと熱を増す自分のモノが解放まで秒読みになっている。
「ひゃぁ…し、もっ!」
「い…よ。はっお、れも…」
自分の腹と中に暖かい感触が広がり、荒い息のまましんのすけと唇を合わせて舌を絡めた。
「はっ…ん……しん、のすけ、早く抜けよっ勉強するぞ」
「続き…しようーよ」
「ちょっ!!んあっ」
抜かれないまましんのすけがまた俺の中を掻き回し始めて仰け反った。
しんのすけが出したモノで滑りが良くなった中から溢れ出ている感触と音に目を固く閉じながら抱きついた。
「ただいまー」
「「!!」」
遠くの方から聞こえてきた声に思わずばちっと眼を開けてしんのすけを見た。
当然しんのすけもピタッと動きを止めて聞き耳を立てている様だった。
「あら?ひまそこで何してるの?」
しんのすけの母親の言葉に階段を降りる音がして一気に脈が速くなった。
「何でもない!!」
「あ、そ〜お?…しんのすけ〜?」
玄関が閉まる音がする。
「か、ざまくんっ締め付けないで」
「し、知らないよっ早く抜けって!」
「あ〜折角いい所だったのに…」
ずるりと抜けた瞬間「ぁ!」と小さく嬌声が漏れてしんのすけに笑われた。
「早く行けよっ!こんな所見られて困るのはお互い様だろっ!」
なおもしんのすけを呼ぶ母親の声がする。
しんのすけは頭を掻きながら服を整えて「行ってくる」と残し部屋を出て行った。
中途半端に煽られた身体を起こして、近くのティッシュを数枚掴み自分で出したモノと中を軽く拭き取って慌てて服を着た。
ベッドの端に腰かけて息を吐いたのと同時にしんのすけの母親が帰ってきた瞬間に言った言葉を思い出した。
『あら?ひまそこで何してるの?』
誰も居ないんじゃなかったのかよ!?
しんのすけの言葉は信用出来ない……
項垂れていたら、かちゃりとドアが開いて顔をあげた。
「あの、風間さん?」
「!!…ひ、ひまわりちゃん」
あぁ、しんのすけ早く戻ってこいよ!馬鹿!!こんな場面気まず過ぎてどうしていいのか分からない。
目を合わせられなくて思わず俯かせた。
「お兄ちゃんの事よろしくお願いします」
「は?」
「ひま!何してるの!?」
どたどたと階段を上がってくるしんのすけの声が俺の言葉をかき消してしまった。
顔をあげた瞬間笑顔のひまわりちゃんが手を振って現われたしんのすけの背中を勢いよく叩いて階段を降りて行った。
「いったぁあ〜何?何があったの?」
「自業自得だ馬鹿っ」
「え?」
何でしんのすけの妹によろしくと言われなきゃいけないんだ。
「決めた」
「な、何を?」
「もう二度とお前の部屋でしない」
それが一番無難だ。
情事を全部か一部か分からないがひまわりちゃんには確実に聞かれていた。
「何で!?」
「わかるだろ!もう本当お前最悪!」
がばっと抱きついてくるしんのすけを引き剥がそうとするのに、そのままベッドに倒れこんで更に抱き込まれた。
「どけってしんのすけ!」
「ひまから何か言われた?俺怒ってくるよ!?」
「違う!よろしくって言われたんだよ!!よろしくって!あれ確実に聞かれてただろう!!」
「へ?よろしく?」
「そうだよ!!」
「…なあんだ」
そう言って僕の顔にキスの雨を降らして更に抱き締めてくる。
「やめろっ!」
「いやぁん風間くん大好きだよ!」
「五月蠅いっ離れろ!!お前なんか大嫌いだぁあ!!」
思いっきり突き飛ばしたいのに、絡みつくしんのすけの腕から逃れられない。
笑うしんのすけと怒る僕、昔から変わらないこの構図。
僕はしんのすけにもそうだが、もしかしたらしんのすけの家族にも勝てないのかもしれない。
あぁ…最悪だ。
これからの事を思って深くため息を吐いた。
おわり