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□勘違いと本音
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俺は普通に県立の高校で、風間くんはここから二駅離れた私立の男子校に通ってる。
幼稚園の時から頑張ってた風間くんが俺とは違う学校に行くのは当たり前の事だったけど、最初は受け入れられなかった。
高校に入ってから更に春日部防衛隊の集まりもあまり顔が出せない風間くんに会いたくて会いたくて、携帯を持ったその日に学校に押し掛けてアドレスの交換を果たした。

俺は毎日風間くんに会おうと誘い、水曜日と日曜日だけしか会えないのを知った。
水曜日の朝、何時もの様にメールを送って登校する。
学校に着くときには返ってきてるいつものメールが今日に限って凄く遅い。
毎回「いいよ」というたった3文字。
だけど風間くんは一度も断ったことはない。だから昼休みにやっと返ってきたメールを見て驚いた。

『先輩と付き合うことになったから会えない』

風間くんの学校って男子校だよね?
先輩と付き合うって考えなくてもそれは男で………風間くんは気付いてないかも知れないけど、俺が毎回約束を取り付けてまで会いに行くのは風間くんの事が好きだからなんだよ?
男からの告白何て気持ち悪いと思われたら嫌だから我慢して我慢して、幼馴染みの場所を壊さないようにしてたのに、何で俺じゃない別の誰かを…よりにもよって男を選んじゃうのさ?
午前中の授業以上に身の入らない午後を過ごした後、急いで電車に乗り込んだ。
普段以上に二駅が遠く感じる。
着いた電車から飛び降りて改札を急いで抜けた。

風間くんと同じ制服の波が押し寄せてくる。
必死で辺りを見回して風間くんを探す。

ほら見つけた。

俺はどこに居たって風間くんを見つけられる。
でもすぐ横に風間君より背が高い男が居て、風間くんを見て笑ってた。
大人びた感じが俺には持ち合わせていない雰囲気を醸し出していて、一瞬負けてると思ってしまった。

だって可愛い風間くんと大人びた隣の男は凄くお似合いに見えてしまったんだ。
身長だけなら男に負けてない。
学生服を着崩してチャラチャラ感丸出しな俺と、びしっと制服を着こなす男では雲泥の差だと思う。
風間くんの好きな人はその人なの?
それは凄く嫌な事で…遠ざかる二人に向かって走り出した。


がしっと風間くんの腕を掴めば、驚いた表情が俺の方を向く。

「しんのすけ!?」
「風間くん!!何で!?どーして俺じゃダメなの?隣の爽やかクンの方がやっぱりいいの?嫌だよ!俺の方がずっとずっと風間くんの事が好きなのにポンと現われた男になんか風間くんを奪われたくないよ!!」
「は?はぁ?何言ってんだよ」

風間くんが俺の腕を振り払おうと何度も腕を振る。
何でそんなに嫌がるの?そんなに隣の男の方が良いの?
腕に力を込めて自分の方に引き寄せた。
俺とは真逆な風間くんの華奢な身体はすっぽりと納まって、シャンプーの香りが鼻をくすぐって凄く胸がドキドキする。
やっぱり勘違いとかじゃない。本気で俺は風間くんが好きだよ。

「は、なせ!しんのすけ!!」
「嫌だ!絶対離さない!」

ぎゅうぎゅう締めつけていたら隣から大きな笑い声が聞こえて、思わずそっちを向いた。

「あ、ごめん…やり取りが面白くて我慢できなかった」
「風間くんは俺のだから!」
「うん、十分分ったから放してあげなよ?風間顔真っ赤だよ?」

言われて風間くんを見たら本当に真っ赤な顔で横を向いていた。

「風間悪かったな?急に買い物付き合わせちまって、仕方ねーな頑張って一人で選んでみるわ」
「え?え?」
「あ、先輩!」

軽やかに手を振って笑顔で去っていく男を呆然と見送っていると、近くからため息が聞こえた。

「しんのすけ離せって」
「あ、う、うん」

よく状況が飲み込めなくて抱き締めていた風間くんの身体をそっと離して、じっと風間くんを見た。

「先輩が言ってただろ?買い物だよ」
「でも、じゃあ何であんな書き方したのさ」
「書き方?」

聞き返されたから携帯を弄って今日の昼に来たメールを見せた。
最初は訝しげに見ていたけど、じっと見た後で風間くんの顔が赤くなっていく。

「こ、れは…昼生徒会の仕事とかあって、うちの学校って携帯禁止だから急いで打ってたら……」
「こうなったの?それともこうなれたらって事?」
「なっそんな訳ないだろ!」
「ね?風間くんは俺の事好き?俺風間くんの事でなら飛んでこれる位風間くんの事が好きだよ」
「ば!お前ここ何処だと 「分ってるよ!でも、もう言っちゃったし。ね?返事聞かせてよ」

顔を真っ赤にしてる風間くんの瞳があっちこっちに動いている。

何も言わなくなった風間くんはそのまま改札に向かって歩き出した。

「ちょ、風間くん!!」
「うるさい!こんな所で話せるかよ」
「え?じゃーさ、風間くんのお家にお邪魔してもいいの?」
「勝手にしろよ!」

スタスタ歩く風間くんの前に回り込んで覗き込めば、相変わらず顔を赤らめたままで眉間にしわを寄せてる。
可愛い。そんな事を思いながら自分の手を風間くんの手に絡めた。



おわり

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