mix
□I am・・・
2ページ/8ページ
「とうまとうま当麻くーん。外に出る時の荷物ってこれだけあればいいのかなー?」
「んあー?上条さんはよく分かりませんのことよー。大体、俺じゃなくてツナが『外』に行くんだろ?お前が必要だって思うもの持って行けばいいんじゃねぇの?」
学園都市と言われるこの街の男子寮、その一室に、上条当麻という黒いツンツン頭が印象的な少年と、ひょこひょこと跳ねた蜂蜜色な頭と男にしては大きめな瞳がこれまた印象的な上条より年下の少年がいた。
上条の住宅らしいその部屋で何やら荷作りをしているツナという少年に、ジュースを入れたコップを差し出し、ツナの目の前に自分のコップを持って座る。が、座った拍子にコップからジュースが零れ、自分のズボンを濡らした。
「・・・・・・・・・不幸だー」
「はいはい気にしない気にしない。ほい、ティッシュ」
「ん、サンキュー」
ツナから受け取ったティッシュでズボンをぽんぽんと叩きながら染み込んだ水分をティッシュに染み込ませる。残念なことに天気が良いからと先程持ち合わせの少ないズボンを洗濯し、ベランダに干したばかりなので代わりのズボンに履き替えることは出来ない。また一言上条は不幸だと心の中で呟くと、年下の親友に言われたようにいつものことだ気にするなと気分を入れ換えた。
「しっかし、学園都市もよく分かんねーこと考えるもんだよな。いくらツナが学園都市に一人しかいない能力者だからって普段あんなに俺らが外に出るのは厳しいのにツナのデータを取りたいからって『外』の生活に戻すなんてよ」
「だよねー。面倒ったらないよ。あ、旅行じゃないからそんな服要らないのか。そっかそっか」
「たしか十五までだっけか?」
「高校入る頃にはまたこっちに戻ってくるつもりだよー。今俺が小六だから、あっちに行ったら半年くらい小学生ライフを過ごして中学生として三年間。母さんと長く過ごすなんて四才の頃以来だからそこはちょっと嬉しいんだけどさ、やっぱりここ離れるのもそれはそれで寂しいなー。元々俺って第一位とは別の意味で希少らしいからクラスメイトとかいないんだけど、それでも当麻と離れるのは寂しいとか思うわけなんだよ」
「おぉ、嬉しいこと言ってくれんじゃん。・・・・・・そっか、ツナって有り得ないはずの能力者なんだよな」
「俺は当麻の能力も大概有り得ないと思うんだけどね。・・・当麻も俺と一緒に『外』に来れればいいのに」
「まぁ、ツナが高校生になる頃にはまた会えるんだろ?俺はここを離れることはないだろうし、ずっとここで待ってるからよ。お母さんに甘えてくるだけのつもりで行ってこいって」
「俺のこと忘れたりとかしないでよ」
「当たり前だっての」
言いながら上条はツナの頭を乱暴に撫で、明るく笑った。それに照れを隠すように頬を膨らませたツナは髪を直しながら溜め息をついた。
「簡単に言うなよなー。守らなきゃいけないこととか結構あるんだから。頭悪いフリとかさ」
「なんだそりゃ」
二人はいつものように笑い。別れを惜しむように殊更明るく振る舞った。すると、いきなり上条が立ち上がる。
「よし、じゃあここは上条さんがツナの出発安全祈願と回帰祈願を兼ねてお昼ご飯を奢って差し上げませうかな!!」
「おお、太っ腹ー!!」
ぱちぱちと手をたたきながらツナも勢いよく立ち上がる。早速出かけようと財布を探し財布を置いてあるはずの床を見てみると・・・・・・・・・
まだジュースが半分以上も残っていた上条のコップが倒れ、床に広げられたツナの荷物を濡らしている光景が視界を占める。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
しばし続く静寂。
「あのう・・・・・・。ツナ?いや、綱吉さま?」
「ばかーーーーーーーー!!!」
「ぐっふぉっ!!!」
部屋に大きな音が響いたその日の翌日、ツナは予定通り母の住む並盛町へと旅立ったのだった。
.