シリーズ物の小説

□森での食事
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鬱蒼とした森の中。
赤い水たまりで服を汚しながら生肉を小分けする。
生肉を頬張り、グチグチと音を立てながら作業を続ける。
あぁ、おいし。
菜食主義な僕だけど、時々肉が食べたくなる。もちろん、人の道を外れたものだけど。
あぁ、おいし。
加熱した物も好きだけど、やっぱり生だよね。な・ま。
新鮮な物ほど味が良い。と僕は思う。

グチグチグチュグチュグチャッベチャッヌチッグチャッブチッ

嫌な音が僕の周囲だけに響く。
この森に住む動物は気味悪がって近づいたりしない。
蛇や熊、鷹だってやってこない。
それだけこの光景が異様・・・なのかな。

「おい」

手を止め、振り返る。

「あ、サソリさん」

懐に忍ばせていた綺麗な手ぬぐいで口を拭ってからニコッと笑ってみせる。
でも、苦渋を浮かべられる。あぁ、またかって顔をしてる。

「すみません。任務中に。我慢できなくって」

照れたように笑う僕。
サソリさんは呆れた顔を浮かべるとそのまま僕の方へ歩いてきた。

あぁ、怒られるのかなぁと僕は思いつつ、名残惜しいけど生肉に別れを告げて立ち上がった。

「帰るぞ」

ギロッと睨まれる。

「はい」

僕は肩を竦めるしかない。

少ししか食べれなかったけど・・・

「満足だなぁ」

サソリさんの後ろで歪んだ笑みを浮かべていた。



菜食主義だけどカニバリズムな僕。
真逆な主義を掲げる僕。
歪んだ僕。

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