Fate

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「なぁ・・・アーチャー」

「・・・何だね」

湯の身に茶を淹れていたアーチャーはその手を止めて、切花の方へと視線を寄越した。

「・・・『アミ』と『アユ』、どちらがいいかい?」

「・・・・・・はぁ、一体何の話だ?」

突然の言葉に理解不能だと頭を振りながら、アーチャーは茶を注ぐのを再開した。

「何って・・・君の名前だよ」

「は!?」

アーチャーはガチャッと湯飲みと急須をぶつけた。
珍しい光景が見れ、切花はクスッと笑いながら続けた。

「ほら、聖杯戦争も終わったのにアーチャーは真名を教えてくれないだろ?
だから呼び方に困ってね。だから考えてみた
どれがいい?」

「・・・あー、なんだ、その・・・二者択一しかないのかね?」

「あぁ、そうさ。ちなみに、名前は僕が考えみたんだ」

「・・・そ、そうか。・・・はぁ、一人称が戻っているぞ」

「そりゃ失敬。で、どっちがいいアーチャー」

話が戻ったところで、アーチャーは『アユ』に『アミ』か選ばざるえない事に唸った。
判断に困るところだ。

だが、答は意外と簡単に出た。

「では、『アユ』で」

アーチャーが驚くほど早く。

「ちなみに、だ由来を聞いても?」

「アーチャーの『ア』と弓の『ユ』か『ミ』を取り入れてみたんだ。
どうだい?」

「どうといわれてもだな・・・簡易につけられたものだとしか思えないな」

「まぁ、解りやすいし憶えやすいだろ?
『アユ』」

「・・・・・・まぁ、そうだな」

アーチャー、改めアユは照れたように自分の髪をかき混ぜながら笑った。

あぁ、アユはよく笑うようになった。
聖杯戦争中にも笑うこともあったような気がするが、気がするだけ。
ああそうとも、気にしている暇などなかった。
だが今は違う。

こうして余裕があるから、無駄な話に興じることが出来る。

アユ。
私の家族の新しい名前。

「士郎と桜を迎えに行ってくれている雁夜が帰ってきたら早速教えてやらないとな」

切花はクスッと笑うと、アユから湯飲みを受け取った。

お茶を啜りながら、もう膨らむことのなくなった腹を優しく撫でた。

「・・・生まれるまでもう少しだな」

「だねぇ・・・はぁ、大丈夫かな」

珍しく弱音を吐く切花に、アユは苦笑を送った。

「なに、心配することなどはないさ
なにせ、私達がいれば君に無理などさせないからな」

「ほんとだよ。転ばせてもくれないだろうね」

「転んだら一大事だろうが」

呆れたと言わんばかりにため息をつき、アユは自身が入れた茶に口をつけた。


「うーん、流石に雁夜たち遅くないかい」

「彼は左足を引きずっているんだぞ?
これぐらいかかるだろう」

「ふーん」

・・・会話が途切れたのを機に、切花とアユは茶を啜った。

すると、玄関が空く音が聞こえ、次に「ただいま」と抑揚の違う三種類の声が玄関から居間に届いた。






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