玩具の奴隷
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船内の空気は一気に緊迫し、バタバタと隊員達が駆け回る音が船内中に響き渡る。
ナース達は安全な場所へ移され、エイミーもまたマルコにそう促されたが首を横に振った。
私はナースでもないし今は2番隊の一員ですと言うとマルコもしぶしぶ納得してくれた。
「!あれは…」
「どうした!」
「前方から三隻の海賊船!内一隻が…おそらく海軍の船かと‼」
「海軍…?」
海賊に乗っ取られたのか?
…いや、この辺りに島はないはずだし帆を見る限り名の通った海賊とは思えない。
そうマルコは1人で頭を巡らすがそんな暇はない。
敵の船がモビーディック号目掛けて大砲を撃ち始めたのだ。
それと同刻、バタバタと何人かの隊長と隊員達が甲板に到着し腕を鳴らす。
「…ま、どっちにしろ白ひげ海賊船にケンカ売るくらい世間知らずには違ぇねぇよい」
「おー、こういうの待ってたんだ。2番隊が先陣を切るぜ、いけるなエイミー!」
「は、はい…」
「!待て、エイミーにはまだ早ぇよい、こっちで守らせろ」
咄嗟にマルコが止めるとエースは理解出来ないように眉間に皺を寄せる。
そしてはっきりと告げた。
「マルコ、エイミーはオレの隊の隊員だ、実力も認めてる。こいつだって多少の危険も承知でこの船に乗ってんだ、女で新米だからって特別扱いはさせねぇよ」
「エース隊長、」
「いけるなエイミー!」
「待てエース、認める認めないの問題でもなけりゃ特別扱いでもねぇよい、ただこいつはまだ…」
「まぁ見てろよマルコ!いくぞ」
「あ、え、エース隊ちょ、」
マルコの言葉を聞き終える前にエースはエイミーの腕を無理矢理引っ張り既に目の前にきている敵船に飛び乗った。
マルコは思わず舌打ちをして、いつも通りがしがしと頭を掻く。
それを見ていたイゾウもやれやれという様子でエースを見送っていた。
「おいエース!エイミーに怪我させたら招致しねぇからな‼」
そのイゾウの声にエースは片手を挙げて応える。
横にいる人物は未だにムスリとへの字口を崩すことはなく、いい歳こいて何やってんだかとイゾウは呆れつつも長く連れ添った家族のふくれ顔を拝むのは面白い、と少しだけ思う。
「マルコ、今回はエースに任せよう」
「…あいつが無理矢理連れてっちまった時点でこっちに選択権なんてもうないだろい。ったく、エースの野郎は人の話を聞きやしねぇ」
はぁ、とため息をつくマルコに対しそりゃそうだとイゾウ。
「あれは直感で動くタイプだからな。うかうかしてたら1番隊隊長といえど手遅れになりかねないよ」
「?そりゃどういう意味だ」
その答えを聞く前に2人ははっとなる。
目の前にいきなり"敵"が現れ、今は敵襲を受けている最中だということを思い出したのだ。
すでに何人かはこちらに乗り込んでいたらしく、先ほどのやり取りを見てか「ナメやがって‼」と勢いよく切りかかってくる。
が、流石隊長格。
もちろん喰らうはずもなく華麗に、そして確実に潰していく。
モビーディック号の甲板上は数分で平和を取り戻した。