玩具の奴隷
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「それにしてもエイミー、おまえなかなか強ぇな!」
「いえ、そんなことは…」
そう否定すると、ハルタさんが次はオレがやる!なんて言うもんだからマルコさんに殴られていた。
「まったく…エイミー傷口は開いてねぇかい?」
「あ…はい、何とか大丈夫です」
「そりゃ良かった。おめぇに何があったらまたナースのやつにどやされちまうよい」
そう言いながら面倒くさそうに頭を掻くマルコさん。
すみませんと軽く頭を下げて言うと悪いのはこいつだよと今度はサッチさんがエースの頭を殴る。
「それにしてもエイミー、あんたが戦えたとは。せいぜいサポートに徹するのがいいくらいと踏んでいたがなかなかやるねぇ」
そう感心したようにイゾウが言うと、それについては同感だと周りもうなづく。
「さっきの風エイミーだろ?能力者なのか?」
エースがそう言うとビクリと肩が揺れる。
エース以外は様子が少しおかしいことに気付いてはいたが、そのまま二人の会話を聞くことにした。
「…はい、私はカゼカゼの実を食べました」
風人間です、と言うとエイミーの手の上に小さい竜巻が出来る。
それを見たエースはすげー!と目を輝かせて大興奮。
ハルタはまたピュウっと口笛を鳴らした。
そして、当然エースに一発入れることが出来たということは"覇気"を纏っているということになるのだが、それについては触れることなくマルコが口を開く。
「…とりあえずエース、次から組み手をする時には俺の許可を取ってからにしろよい、いなかったらイゾウかサッチ…それからビスタ辺りでもいいから絶対に勝手にこんなことすんじゃねぇよい」
「へーい、わかったよォ」
俺はー?とハルタさん。
おめぇもやりかねないとマルコさんに言われ、ふてくされているのが少しだけ可愛かった。
「能力使うのも駄目だ。モビーに燃え移ったらどう責任取るつもりだよい」
「へいへい、ごめんって。もーしねぇよ」
「それからエイミー!」
お前もだぞ、とマルコさんにこってり絞られてエースさんと苦笑いした。
その後運動したら腹減ったー!とエースさんはサッチさんを強制連行。
流石に朝食終わったばっかりなのにサッチさん可哀想だなと思う。
「ねぇマルコ、エイミーがどこの隊に所属するか決まった?」
いやまだだが、とマルコが言うと、ハルタは目を輝かせてこちらを向く。
「エイミーうちの隊に来てよ‼」
「へっ?」
「12番隊はエースみたいに無茶苦茶なやついないし楽しいよ!」
「こらこらハルタ、勧誘はやめな。決めるのは親父とマルコなんだから」
アピールするならマルコでしょ、とマルコを指差しイゾウさん。
そっか!とハルタはマルコの方を向いてぜひ12番隊に!と言うが…いやいや、そういう問題なのか。
「12番隊ね、考えとくよい」
「お、じゃあ16番隊も頭に入れといとくれ。エイミーがいたら華やかになって楽しそうだしねぇ」
「あ!イゾウ裏切ったな‼」
「おめぇらさっきからうるせぇよい。こいつの隊の所属は前隊視野に入ってんだからぐちぐち言うんじゃねぇよい」
結局かよ、とハルタさんは口を尖らせる。
隊員の方がハルタさんとイゾウさんを呼びに来たところでマルコさんも親父んとこ行くと足を進めた。
何をすれば?と聞くと、マルコはああ、と思い出したように口を開いた。
「今日はおめぇの引越しの日だよい」
「…引っ越し、ですか?」
「物置部屋なんかにおいて悪かったな。新しいもっとちゃんとした部屋を用意させたから、今日はその部屋の整理でもしてるといいよい」
「わ…わかりました。ありがとうございます」
そう言うと「言えるようになったじゃねぇかよい」とポンっと頭に手を乗せてマルコさんは微笑む。
…ここの人たちは、なんだか頭に手を乗せたり、撫でてくれたり…安心させてくれることが多い。
その度に心が暖かくなるのがわかる。
…こんなに幸せなことはないなと思いながら、マルコさんが新しい部屋に案内してくれた。
ここだ、と立ち止まると扉を開けてくれて暖かい日差しが入る。
「ちなみにそこがオレの部屋。そっちがエースの部屋だよい」
「ええっ、」
近…
「おめぇは隊員唯一の女だからな、ほんとはナースんとこ置いてやりたかったが生憎満員でねぃ…近くにオレらがいた方がまたマシだろい?なんかあったら遠慮なくすぐ呼べよい」
「わ、かりました!ありがとうございます」
そう言うとマルコさんは手をパタパタと降って親父の部屋に向かっていった。
私はというと部屋の整理と言われたが、実際整理するも何も持ち物がほとんどと言っていいほど何もなかった。
大事なのは紙切れ1、2枚程で、服もフィオさんに頂いた何着かしか持ち合わせておらず"引っ越し"はすぐに終わってしまった。