玩具の奴隷
□◉03
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「よろしくなー嬢ちゃん!」
「よ、よろしくお願いします」
「男ばっかで大変だろーが頑張れよ〜!」
「ありがとうございます、」
道を通るたびに声が掛かりなかなか進むことができない。
一応本日の主役なので仕方ないのかもしれないが、知っている顔がなかなか見つからずエイミーが少しずつ不安になり始めていた頃。
「オイ、一人一人にそんな丁寧な挨拶返してたらいつまで経っても進めねぇよい」
「!マルコさんっ」
自然に頬が緩む。
それにマルコは首をひねったが、こっちだよいとすぐに手を引かれる。
「あの、どこに行くんですか?」
「隊長達のところだよい、もともと今日はそれが目的だったんだからな」
ホレ、と目的の場所についたのかポンっと背中を押される。
それに気付いた童顔の男性とシルクハットを被った男性…それから横にはこちらに目もくれずもくもくと食べ続けるエースさんが。
「お!新人とマルコじゃん」
「嬢ちゃん昨日は悪ぃねぇ〜」
「い…いえ、こちらこそ…」
「もう紹介済みのも混じってるが一応俺から説明してくよい。まずこっちが12番隊長のハルタ。そんでこの黒いおっさんが5番隊隊長ビスタだ。2人とも刀を使って闘うよい」
刀…そっか、海賊だもんねと頷いているとよろしく!と2人は手を差し出しエイミーもそれに応えるようその手を握り返す。
やはり隊長さんたち…オーラが違う。
「そんでもう説明はいらねぇとは思うがそこにいるバカは2番隊隊長大食いエース。んであっちにいんのが…」
「ちょ、と待って下さいマルコさん、」
「?」
「エースさんって…隊長さんだったんですか」
それを聞いてぎゃはははと笑い出すハルタとビスタ。
思い返してみれば、昨日もさっきも隊長の集まりの中親父の部屋に彼はいた。
「や、その…エースさんあんな感じだし、まだ若いから私てっきり…」
マルコさんの隊の人かと、というと周囲はわっと笑い出す。
そんな本人はというと「んぐ?」と何やら理解していない様子だったので、そのままそっとしておくことにした。
その後も次々と隊長達を紹介され、マルコさんは何か取ってくる、とその場を離れたのでようやく席に着く。
ふうっと息を吐くと、隣にコトリと酒を置いて一杯どう?とサッチさんが。
実はお酒は飲んだことがなかったのだが、こういう場では断ってはいけないと叩き込まれてきた為「…じゃあ、」とつい一杯口に入れてしまった。
「お、いける口かい?これけっこう強めのやつなんだけど」
「は、はい…」
大丈夫です、というと頭がぐわんぐわんと揺れるのがわかる。
一杯でこれとは…お酒恐るべし。
「サッチさん、厨房の方はもういいんですか?」
「とりあえず一番やべぇのが落ち着いたんで大丈夫だよ」
ホレ、と案の定エースさんを指差すのを見てなるほど、と頷く。
「それよりエイミーちゃんがこんなベッピンさんだったとはねぇ…」
「え!いえ…そんなことは…」
「はは、遠慮はいーよ!こんな綺麗だったら恋人の1人や2人いるんだろーけどよぉ。おじさん悲しいぜぇ」
「いや、そういうのも特には…」
「まじで⁉じゃあオレ、エイミーちゃんのこと狙…」
とサッチさんが言いかけたところでガスっと後ろからどつかれダウンした。
「サッチ、親父に言われたそばから新人口説いてんじゃねぇよい」
「!マルコさん」
遅かったですね、というと飲んだのか?と聞かれる。
少し飲んだだけでも火照っている自身はおそらくお酒にはそんなに強い方ではない。
それを悟ったのか、マルコさんは持っているお酒を別のものに変えてホラ、と前に出した。
「ありがとうございます」
ニコリと微笑んでちびりと飲むと、梅の味が口の中に広がった。
先ほど飲んだ酒よりもずっと度数の低い、ジュースのようなお酒だった。
「実はお酒飲むの初めてなんです」
「初めて?」
それを聞くと、マルコは少しばかり考える。
マルコから見たエイミーは可愛い系というよりも綺麗系。
童顔といえば童顔なのだが不思議と大人っぽさもあり特に露出しているわけでもないのに色気も感じられた。
サッチにしても、あまり若すぎる子は流石に犯罪だ、と口説きにはいかないのでおそらくマルコと同じ考えだろう。
…大方22、23歳くらいだと。
が、もしかして…
「…エイミー、おめぇ年はいくつだよい」
「?17歳になります」
それを聞いた周り半径2mほどにいた船員さん達は一斉に声を上げる。
ダウン中のサッチも飛び起きた。
「…ってことはまだ16かよい」
マルコは衝撃を受け、額に手を当てて俯いていた。
それを見て私も苦笑いした。