玩具の奴隷

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「…へ?」

「っ親父‼‼」

グラララとまたも陽気に笑う白ひげさんと、取り乱すマルコさん。
そもそも息子になれとは…どういう意味なのだろう。
何もわからず立ちすくんでいると、白ひげさんは私の目の前で膝をつく。


「これは色々闘ってきた目だぜぇ、マルコ」

「親父…」

「こいつは強いぜぇ、グラララ」

「?、?」


そして今度はマルコさんに向き合う。



「マルコよォ、ローラのことは覚えてるだろ」


それを聞くとはあっとため息をついてマルコさんはもちろん、と呟く。


「長くこの船にゃ乗ってるが…親父が唯一心から愛した女性だ。忘れるはずがねぇよい」

「!」


唯一、愛した女性…


「グラララ、わかってるじゃねぇかよマルコ。そしてコイツぁそのローラが守ってくれと手紙を通してオレに頼んだ子だ、もう息子だろぉよ」

「ローラが、手紙に…」


それを聞いたマルコさんは、何かを考えるように俯いた。
白ひげさんはというと、私に行く当てはあんのかいと問い、私がそれに曖昧に答えると決まりだな!と自慢の髭をいじりながらまた陽気に笑い出した。

未だに先ほどの意味がわからずあたふたしていると、白ひげさんがところで…と口を開いた。



「この手紙は…ちぃと真ん中のページが抜けてるようだが」

「!」

「何かしらねぇか」


ぎゅっとポケットを握る。
手は汗ばみ、すこし…震えていたかもしれない。


「…何も、」

知りません、
そう答えた。


「そうか、ならいい」


とりあえずオレの意見としてはそういうこったと白ひげさんが言うと、マルコさんはため息をつきながらちらりとこちらを見る。


「親父はこうなったらもう聞かねぇから仕方ねぇが…あんたはいいのかい」

「?」

「親父のはわかりずれぇからな。さっきの"息子になれ"ってーのは、この船のクルーになれってーことだよい」

「…へ?」

「つまり、俺たちの家族になれってことだよい」

まぁほぼ拒否権はねぇが、とマルコは続ける。

家族…そんなこと考えたこともなかった。
正直に言うと、怖くて考えたくなかったのだ。
憧れることはもちろんあったその暖かい存在を、自分は壊すことが出来るほどの過去とその代償を持っている。
そんな私に、ここのクルーになる資格なんか…




「余計なこと考えんじゃねぇよガキがぁ」

「!」

「そもそもここがローラのいた街だ。っつーことはオメェのいた街ってことになるはずなのにあの住民の様子、訳ありってとこだろい?」


ポン、とマルコさんの手が自身の頭に乗せられる。


「あ…」


自然と涙がこぼれ落ちる。



「グラララ…今は話せねぇみてぇだしゆっくりでいい、オメェのペースで話してくれりゃいいさ」 

「う…、」

「アホンダラァ、もう一度しか言わねぇぞ」



"俺の息子になれ"

 
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