玩具の奴隷
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なんの騒ぎだい?と出てきた人物を見て、人々はまた騒ぎ出す。
「わ!見て見て!一番隊隊長のマルコさんよっ」
「ほら、ご近所の奥さん!あの人に恩があるってずーっと言ってたわ‼」
町の人たちが騒ぎ、きゃあっと黄色い声を上げる者もいる。
ほんとにこの人達はこの街では大人気なのだと目の当たりにする。
「マルコ隊長ォ!なんでも親父に挑戦者が現れたらしいですぜぃ」
「…挑戦者?」
そう聞いてちらりと目の前を見ると、細身の男とも女ともとれるようなフード姿の人物が目に見える。
こんなに騒がれている中、その人物は一言も発さない。
首を傾げながらマルコは尋ねる。
「おいそこのフード野郎、親父の首を取りに来たのかい?」
そう問うと、"フード野郎"は首を横に降る。
それを見た先ほどのおばさんが興奮したような口調で「隊長さん!!」とぐいぐい前へ出る。
「こいつは数ヶ月前にこの島に流れ着いたどこの馬の骨かもわからない得体の知れない輩です!ボロボロだったこいつを助けてやったのにも関わらず、この街の英雄の白ひげさんの首を狙ってるっつーんですよ‼」
どんどんヒートアップするその人物は続ける。
「外からきたやつはみんなそうです!ここが白ひげさんのナワバリになってからは数が減りましたが、こういう世間知らずの馬鹿はまだこの世に沢山いる。もちろんこいつが白ひげを探してるって聞いた瞬間追い出しましたが…まさかまだここにいたとは」
今すぐ追い出すので安心して下さい、とそのおばさんは続けるが、マルコはそれに待てをかける。
ですが、と尚も続けようとするその人物の声を無理矢理遮り、マルコは"フード野郎"の前へ出る。
「…おまえ、親父の首を狙ってんのかい?」
もう一度そう尋ねると、ワンテンポおいて答えた。
「いいえ」
そう聞いた街の人は嘘をつくなと激怒。
だがそれを「うるせいよい」と一言で止めると、マルコは質問を続けた。
「親父に何の用だい」
「…話がしたい。渡したいものがある」
「"渡したいもの"?」
マルコは首をひねる。
なんだこいつはと、とても親父の首狙いではなさそうな目の前に人物に思わず?マークまで浮かぶ。
「悪ぃが素性も知らねぇやつを親父の前に通すわけにはいかねぇ。伝言ならオレを通して伝えてやるよい」
「…それはできない」
そうするとほら見ろ!と言わんばかりの住人はまた騒ぎ出すが、今度は"フード野郎"がそれを遮る。
「直接会って、話をしたいんです」
「だからさっきも言ったがそれは…」
「…隊長さん、お願いします」
「!」
そう言って深々と頭を下げるそれを見て確信した。
親父の首を狙っていねぇのは確かだと。
たが今この騒ぎの中親父に会わせるのは確かに得策じゃあないと判断し、ゆらりと口を開く。
「…俺たちは今、南の海岸に停船してる。明日の昼そこへ来なフード野郎、仕方ねぇから親父に話つけといてやるよい。その代わり俺たち隊長らがうじゃうじゃいるんだ…間違っても変な気ィ起こすんじゃねぇよい」
「!」
「そんな隊長さん危険すぎますよ!こいつは…」
「俺が今決めた、隊長命令だよい。おめぇら住人共はもう口を出すな、いいな」
そう言って酒場へ戻るマルコの背中に"フード野郎"は何も言わず、深々と頭を下げた。
「おぅ、遅かったじゃねかマルコ」
その人物はグララララ、と陽気に大声で笑う。
「親父に話があるっつーやつがいてよ、勝手に明日モビーに来いって話つけちまったよい。それがちょっと怪しいやつで…」
「グラララ、構わんさ。それよりマルコォ、飲み足りねぇんじゃねーか」
そう言って酒をずいっと前に出して並々についでく親父。
まったく…こっちは真剣な話してるっていうのに…
「親父にはかなわねぇよい」
まぁ明日わかることだと、マルコはくいっと酒を口に運んだ。