玩具の奴隷
□◉03
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「さぁオメェら!宴だァ‼‼」
「「「ウォオオオオォォッ‼‼」」」
それからはあっという間だった。
あの後サッチさんは急いで厨房に向かいエースさんは廊下を走りながら皆に宴だぞー!と叫んでいく。
マルコさんは残りの仕事があるからと部屋に戻ったようで、残ったイゾウさんは丁寧に船の中を案内してくれた。
そんなイゾウさんに思わず見とれ「綺麗ですね」と俯き気味に言うと、少しだけ困ったように笑いながら頭を撫でられた。
妹ができるってのはなんだか親みたいな気持ちになるもんなんだね、と笑ったイゾウさんは、やっぱり綺麗だった。
そんなこんなで船内を一周すると、宴の準備は早くも万全なようで。
「フードエイミーー!こっちだこっち‼」
「!エースさん…」
「やれやれアイツは…品なんてものがありゃしない」
そう呆れながらイゾウさんと近付くと、既に1人宴を始めるエースさんの姿が。
目の前には大量の料理が。
…そして大量の完食された皿が。
「は、ほんいえはほやいんよんえだほ」
「え?え?」
食ってから喋りなとイゾウさんがチョップを食らわすと、エースさんは一瞬喉に詰まらせる様子を見せるが無事ごくりと飲み込んで「死ぬかと思った」と一言。
それにしてもほんとにすごい量だ。
「親父親父!親父が呼んでたんだよ!」
「あ…はい、それで白ひげさんはどこに…」
「知らん!多分今頃………あっ、オイてめぇ今オレの肉取ってきやがったな‼」
続けて待てやゴラァっとエースさんは隊員さんを追いかけて行ってしまった。
「まったく騒がしいヤツだようちの末っ子は。親父ならあっちにいるよ、ついてきな」
「は…はい、イゾウさんその、何から何まで…あ、ありがとうございます」
「気にすることはないさ、家族だろ?」
「!はい」
まだ聞き慣れない"家族"という単語にむず痒い気持ちになりながらも自然と頬が緩む。
すっかりイゾウに懐いたエイミーであった。
白ひげさんの前に行くと、周りに数人のナースさん達が囲うようにして並ぶ。
もちろんフィオさんも混じっており、手を振るとウィンクで返してくれた。
白ひげさんがこちらに気付くと「エイミーこっちへきな」と自身の膝をポンポン叩く。
それを合図にイゾウさんから頑張んな、とエールをもらい少しだけ頬が緩む。
そして白ひげさんの前までくると、ひょいっとあぐらをかいていた白ひげさんの膝に乗せられる形になった。
驚いて動揺しているとグラララ、と笑われてしまった。
「ヤローどもォ‼楽しんでやがるかァ‼‼」
"親父"の一言でウォォォと活気づく船員さん達。
見渡すとこれは一体何人程いるのか、どこを見ても人、人、人…
そんなことを考えている横で"親父"は続ける。
「オメェらに新しい家族ができた‼ここにいるエイミーだ‼」
そう言うと一瞬ざわつく船員たち。
それもそうだろう、何でも白ひげさんは"娘"を迎い入れるのは初めてらしい。
「見ての通り新しい家族はオレの"娘"だ。オメェらわかってるとは思うが…変な気だけは起こすなよ、親の鉄拳が待ってるからなァ、グラララ」
親父がそう豪快に笑うのを合図に全員がわっと笑い出す。
よろしくなー!とか嬢ちゃん可愛いなー!とか。
色々と飛んで来る言葉に驚いて声も出ない。
こんなに歓迎されたのは生まれて初めてだったからだ。
「エイミー、オメェも楽しんできな」
「!はい、白ひげさん」
そう返事をすると待て、と止められる。
首をかしげると、白ひげさんがゴホンと軽く咳払いをする。
「"白ひげさん"ってーのは、ちと他人行儀だとは思わねぇかァ、エイミー」
「!」
「親父とでも呼びなァ」
「お…おやじ?」
何だか恥ずかしいな。
もう一度小さくおやじ、と呟くと「上出来だ」と褒めてくれた。