玩具の奴隷
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「ヤローどもォ!活気溢れるこの街の心遣いに乾杯だぁっ‼」
「「「「ウォオオオッ‼‼‼」」」
ここは街一番の酒場。
人々はこの日の為に、ありったけの酒ととびっきりの料理を集めて英雄たちをもてなす。
店の中では船長や隊長らが。
入りきらない船員達といえば外でもどこでも祭のような騒ぎっぷり。
それを見て街の人も陽気に笑う。
…本来、海賊とこのように振舞うのは異例ともいえる。
ましてや海軍などに見られてはこの町の人々にも危険が及ぶのだが、幸い海軍はほとんど寄り付くことはなかった。
そのことを把握しているからこそ、もてなす側ももてなされる側もこうして笑顔でいられるのだ。
白ひげ海賊団の"ナワバリ"の中でも、ここは異例中の異例。
お気に入りの町だったのだ。
「親父、酒もいいが大概にしとけよい。後でナースにしばかれてもフォローできねぇよい」
「グラララララ、そう固いこと言うなマルコ。ここは特例だっつったろうよォナース共もよぉっく承知しているはずだぜぇ」
「そうそうマルコ隊長っ!親父もこう言ってることだし、今日は気にせずパーっといきやしょうっ‼」
ひとりがそう言い出すと、周りにいた者たちがわぁっと騒ぎ出す。
「…これは何を言っても聞かなそうだねい。まったくしょうがない親父と息子共だよい」
「俺の息子達だからなァ。まったくしょうがねぇ、グラララ」
陽気笑う白ひげのクルー達。
それを見てまた笑顔を咲かせる街の人びと。
そこへ、それに染まらず1人の人影だけがゆらりと姿を現した。
「あの、ちょっといいですか」
「あん?」
外にいる船員の1人に声をかける。
細身で、フードを深く被っている。
「エドワード・ニューゲートさん、いらっしゃいますか」
その一言を聞いて、その船員と周りの人たちがゲラゲラと笑い出す。
だいぶお酒が回っているようで、皆顔が真っ赤になっている。
「そりゃいるだろうよォ!ここは白ひげ海賊団なんだからよォ‼」
「うぃっく…何だニイちゃん、一目見ようってか?それとも…挑戦状かなんかかい?」
男がそう言うと、またわぁっと笑い出す船員たち。
「ちが…自分は、」
そう言いかけると周りの人たちがその人物に気付き、慌てて止めに入る。
「ちょ、ちょっとあなた!まだこの町にいたの!?早くここから出て行きなさい!」
「おいみんなっ、あのガキがいるぞ‼早く追い出せっ!」
「あ…」
がっと手首を捕まれるが、抵抗する間も無くそれは風となってすっと通り抜ける。
「うわぁああっ!なんだこいつの体っ」
「ちょっとあんた無駄だよ、そのガキは悪魔の能力を持ってるから言葉で言ってやんないとわかんないんだよ」
そう言って体格のいいおばさんが前へと出る。
周りの船員達も何だ何だと騒ぎ立て、街の人々もざわざわと人だかりが出来る。
「…邪魔をしないでほしい」
「それは聞けないねぇ。白ひげ海賊団はこの島を救った英雄だ。賞金首狩りの残党だか名声がほしいだけのガキなんだかは知らないけど、この街にいる間英雄に不快な思いをさせるわけにはいかないんだよ。さっさと荷物まとめて出て行っておくれ!」
そう言うと船員からは「兄ちゃん無駄死にはやめとけ」と笑い声が。
町の人からは賛同の声が広がった。
その人物は大ブーイングの中、何も言わず立ちすくむ。
考えていたのだ。
それは何を言っても無駄なことを知っていたから。
さてどうしたものかと頭を巡らすと、酒場から一人の人物が顔を出す。
「騒がしいからと来てみれば…一体なんの騒ぎだい?」
「!」
それはパイナップルヘアーの…変わった人だった。