玩具の奴隷
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騒がしい宴も終幕。
みんな雑魚寝のように寝てしまった。
こんなに人数がいるとなかなかすごい絵図だ。
サッチさんとエースさんが殴り合うような形で寝ていて、思わずふふっと笑みが溢れる。
「少し風にでも当たるかい?」
「!マルコさん…そうですね」
少し飲みすぎましたね、と2人は甲板へ出る。
波の音と潮の匂いが気持ち良く、火照った頬がくすぐったくなる。
これから私は海賊になるのか…と思うと、なぜだか可笑しくなった。
「エイミー、おめぇを刺した住人なんだけどよ…」
ほんとはもっと懲らしめてやりたいが…と続けるところを、エイミーは悟っていたのか首を横に振って「もういいんです」と答えた。
親父が認めたからにはエイミーはもう家族。
仕返したい気持ちはもちろんマルコにもあったが、ここの島はこの海賊団にとって特別。
気持ちがあってもマルコにはとても出来なかった。
すまねぇな、と告げると彼女は笑った。
「明日モビーはここを発つよい」
「明日…」
「またしばらくここには帰って来れねぇと思うが…大丈夫か?」
「…はい。もうここには…何もありませんから」
淋しげにそう言ったエイミー。
何もないこたぁないだろ?と言うとその人物は首を横に振った。
「実は私…街を海賊に襲われたあと、別のところにしばらくいて」
「別のところ?」
「はい…今は言えませんが。それでももう一度ここに帰ってきたのは、お母さんとの約束を守る為だったから…」
「(お母さん…?)」
「ここにくればニューゲートさんがいつか来てくれると思って…もう約束を達成したのでここには何も…ありません、…手紙、渡せて…良かった…」
そういうとふらっと浮いた体をマルコは優しく抱きとめた。
慣れない酒でやられたのだろう、気付くと目の前の人物はすーすー寝息を立てていた。
それよりも気になったのはエイミーが最後に呟いていた言葉。
彼女はお母さんと言った。
流れ的に考えると、自分はローラの娘で手紙を託された、としか取りようがない。
しかし親父が何も言わなかった=おそらく手紙にもそんなことはかかれていなかったのだろう。
かといって、よく考えればローラとエイミーの関係性すら描かれていないのだ。
ローラの実の娘と課程してもおかしくはないが…
「(もしオレの推理が正しかったとして…それだと一つ重要なことがある)」
父親の候補に、親父が入るのではないか、と。
正直、船旅中のローラの様子などはわからない。
が、オレが知っている限りでは、親父が心からあの人を愛していたように、あの人もまた親父だけを愛していた。
それはつまり…
「……」
はぁ、と一つ息を吐く。
「オレも久々に酒がまわったかねい。考えてたら頭が痛くなってきたよい」
「ん…」
さらりと、目の前の人物の髪をなぞる。
月夜が照らす彼女は、男なら誰でも見惚れるに十分な程とても綺麗で。
腕の中で眠る小さな体を、マルコはぎゅっと抱きしめた。