そこから始まる恋もある!【本編完結】

□始まったばかりの恋だから【完】
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俺、早坂里央はよく人に言われる言葉がある。

いわく、「早坂くんってホント優しくていい人だよね」。俺は可愛い女の子にそれを言われたってありがとうと微笑んで流すし、それをやっかんだ男に「なんだよあいつ」と叩かれても、笑顔で聞き流す術を持っている。

だって相手したって面倒くさいしなぁ、いちいち自分の感情を行動に出すのもなんかみっともないし。
そう思ってる俺は決して良い人なわけじゃなく、ただプライドが高いだけなわけだけれども。まぁでもそれが俺だ。世の中うまく渡っていけるに越したことはない。

………そう思っていたわけなのだけれど。

何故か出会ってこの方6年目。俺はこと恭弥に関してだけは、それを守れたためしがない。


つまり何が言いたいかと言うと、今俺のイライラは絶好調に達しそうになっていたりするというアレなわけで。


「……………………なんだよ、こっちは二日酔いで頭いてぇんだっつの。言いたいことあんならさっさと言えって」

「なんでここでお前が不機嫌になるのかその理由がさっぱり分かんない」


じとーっと恨みがましく見る先で、水をペットボトルからラッパ飲みしてた恭弥が不機嫌そうに眉をしかめた。

だからなんで、ここでお前がその顔をするかな。


「――だから言ってんだろ、あれはただのダチだって。俺が飲みすぎたからここまで送ってくれたってだけだろ、良いやつじゃねぇか」

「…………恭弥は警戒心が足りない」

「なんで俺が男に警戒心もたんきゃなんねぇんだ! あー、頭いてぇ」


叫んだのはお前なんだから自業自得だ。
そう思うのに、ムカついてるのに、俺の手はよしよしと恭弥の背を撫でてしまっていた。

…………おかしい。

こんなに恭弥にべた甘になるのが愛だっていうんなら、なんかそれはそれで理不尽だ。と言うか一方通行な気がしてならない。


悩む俺の横で、さすがにバツが悪くなったのか、恭弥がだから言ってんだろと繰り返す。

あぁ聞いたよ、聞きました!
あのちょっとイケメンっぽいお兄さんは恭弥のあっちの世界のお友達なんでしょ。
でもどっちもタチ同士だったから心配ないんですよね、あの男が恭弥のこと猫なで声で「恭ちゃん」って呼んでようが、俺の前でこれ見よがしにお前の身体触ってようが、ただのスキンシップなんですよね。

そう台本でも読むかのように言い返せば、恭弥は分かってんじゃねぇかと笑ったわけで。

瞬間俺の笑顔は凍りついたわけだが。運のいいことにと言うかなんというか、再び米神を抑えてうなり込んだ恭弥は気が付かなかったようで。
じゃあ俺今日午前休むから代弁よろしくと布団に這って戻って行きやがった。


――ってそんなことある訳あるか! アホでしょ、お前!

叫びだしたいのを深呼吸で何とかこらえて、俺は恭弥のアパートをとりあえず出た。
大学には行くが絶対代弁なんかしてやるか。そう思った俺を責められる奴はいないんじゃないだろうか。
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