道化ノ詩


□星屑
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ねぇ、あの人はきっと

星になったのよ、と

貴女は言ったが

間違いだったようだ



幾度空を仰げども

あの人の姿など

見付けられず

頸が痛くなるばかり



私の胸に染み込んだ

あの人が結晶と化して

生まれし湖の水面

揺れる月影

浮かぶ亡骸

此処にあの人は居る



枯れた蓮の華を両手で

そっと掬い上げては

花片を千切って

風に踊らす

そうして生まれた

波紋の中心に立ち

私はやっと

あの人に逢える



献けられた花は

今や灰塵の如く脆く

忘れ去られた歌が

青白い唇を震わせる

天使の叫びも

悪魔の祈りも

砂に埋もれて消える



砂に埋もれて消える…?



ひらひらり

舞い堕ちた翅は

吸い込まれるように

魔女の火炙りに

紛れて死んだ

私は不可能と知りながら

焔を手で掴もうとした



私は不可能と知りながら

あの人を

抱き締めようとした



腕の間から溢れ堕ちる

あの人の欠片を

涙で固めて

もう一度あの人が

私を愛してくれるように




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