灰紫の語り部
□夢と現の狭間で
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ふと目が覚めて時計を見ると、まだ真夜中の3時過ぎだった。
睡眠時間がもったいなく感じて、目を閉じる。
しかし、眠気がどこかへ行ってしまった。
もう一度目を開ける。
ベッドからほとんど落ちてしまいそうな隅っこで、ネズミが寝息を立てている。
「本当に寝相が悪いんだから…」
ぼくは呟きながら、ネズミの体をベッドの真ん中に引き寄せた。
頬にかかる柔らかな黒髪、白くなめらかな肌、長い睫毛、筋の通った鼻、形の良い薄い唇。
規則的に上下する肩は、細身ではあるが逞しい。
普段は皮肉屋で、毒舌で、淡白なくせに、寝顔はなんて無防備で愛らしいんだろう。
いつまでも見つめていたいな、とかぼんやり思っていると、不意にネズミの手がぼくの背に回された。
そのまま、ぼくの胸に顔を押しつけてくる。
「ネ、ネズミ!?」
ぼくは逃げようともがいたが、腕ごとがっちり捕まえられてしまって身動きが取れない。
心臓がドキドキ、いや、バクバクと痛いほどに肋骨を打つ。
そのまま5分が経った。
ネズミが再びもぞもぞと動き、柔らかな髪がぼくの首筋をくすぐる。
「……っ」
全身にじわりと広がる快感に、ぼくは身をよじる。
すると、ぼくを締めつけていたネズミの腕が緩んだ。
体をのけぞらせて離す。
が、ネズミの手が今度はぼくの後頭部に回った。
そのまま強く引き寄せられる。
「…ん……ふ…」
唐突なキス。
というより、ネズミに唇を食べられていると言った方が正しいような、一方的な口づけ。
ネズミの舌が入ってくる。
ぼくは半分パニックになりながらも、それに応える。