月まで届けコンツェルト

□プロローグ
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「時は三世界大戦…。
神族魔族、精霊界を我が手にと攻め入らんとす。

民衆、各々武器を手に取りて立ち上がらん。
されど力及ばず次々命落としけり。
 
これを見兼ねた星霊皇、精霊界に月姫を遣わす。
月姫、黒き渡り鳥の力を借りて七人の巫女を集め、元素の力各々に与う。
 
『月姫が与え給いしこの力 蒼氓が為いざ振るわれん』
 
七人の巫女、星騎士と共に元素の御力奮いて争いを鎮めん…」



近くの教室から教導師が朗々と歴史の教科書を読み上げる声が聞こえる。内容は、三世界対戦(トリニティ・ウォーズ)の伝記の一節。一年生で習う内容だ。
今は5時間目。
何となく気怠い時間帯だ。 
そんな私は今、教導師長室のふかふかなソファーに腰掛けている。
部屋は木目調に統一されていて上品な雰囲気だ。
 
(これが通常時ならもっとリラックス出来そうなのに…)
 
…そう。
今は非常事態なのだ。
私の前には、恐らく残念そうな顔をしたかったのだろう…真に残念な顔になっている担任と、いつもどおりオドオドした教導師長が落ち着き無く座っている。
此処に座ってから何分くらい経過したんだろう?
内容はおそらく今日から1週間前に私が起こした事件の事だろう。
あの時は致し方無かったとはいえ、少々やり過ぎたかもしれない。
「…あの、処分の件でしょうか?」
内心「ってか、呼び出すならさっさと用件言えや」なんて悪態をつきながら話を切り出してみた。
「あぁ…え〜と、その…何だね…ゴニョゴニョ」
フツーに話してください教導師長。隣で担任が睨んでますよ。
「君は〜その…今回の件に対して勇気を持って挑んだと思う…。」
 
(…うん。それで?)
 
「しかしながら…幾つもの校則を破り、学校全体を危機に…全校生徒の命を危険に晒した事は事実だ。その…些か行動が軽率であったと言わざるを得ない…。」
まぁ、確かに?私のせいなのは認めるさ。
…でもさ、魔導師や魔術師が沢山いるのに学校ジャックってどうよ?
「そこでだ、私は教導師長と話し合い、お前に対する今後の処分を決めた」
…うわぁ、しゃしゃり出てきたよ。陰険胡麻すり依怙贔屓教師め。
コイツ、私のこと思っくし嫌ってるからなぁ…。
「私は反対したのだよ?何せ貴様は学校の面子を潰しかけたのだからなッ!…だが、教導師長は貴様に慈悲を掛けて下さったんだ。…有り難く思えよ」
 
慈悲…?
…なんか嫌な予感がする。 
「え〜…。今回の件で我々教師一同は、君の実力が卒業試験の合格レベルに達したものと見なした」
「ッ?あの…教導師長、それって…どういう事ですか!?」
 
…それって…つまり、要するに…
 
「…君も卒業試験に合格すれば、仮に学校を卒業していなかったとしても魔法使いとして認められる事は…知っているね?」
 
要するに、やっぱり、最終的にはそういう事なのか…。
 
「本校は貴殿の魔法使い資格取得を認めた上で、アピス・カーレント嬢を本日付で退学とする」





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プロローグです。
主人公、しょっぱなから波乱の幕開けですf^_^;

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