月まで届けコンツェルト
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髪をなぜる潮風が心地良い。
ここ、ウインディポートは、プルマール大陸の中でもかなりの漁獲量を誇る小さな港町だ。
波止場は船で賑わい、市場には毎日豊富な種類の魚介類が並ぶ。
(いつも思うけど、すごいカラフルだよね…。)
高台にある雑木林は、私のお気に入りの場所の1つだ。太い木の枝によじ登って腰掛けると、町全体が一望できる。
…船を降りてから暫くは、よく此処で父さん達の帰りを待った。
…そういえば、彼奴らが船を降りたと聞いてから何年か経つ。嫌な噂も聞いたり…。アイツ、どうしてるかな?…会ったらぶっ飛ばしてやる!!
「あれ?」
人の気配がする。おそらく5人くらい。
(…珍しいな)
此処は子供達ですら滅多に入ってこない。町のゲートに近いせいか、時々魔獣が入り込む為だ。
…そんな強くないから、良い練習相手とも言うね。
「…は見付かったか?」
「はい…の…は…ます」
だんだん此方に近付いてきているらしい。会話が途切れ途切れに聞こえる。
「では…よ…だ。」
「……ぁ。」
(…何だったんだろう?)
…迷い込んだ冒険者?
たまにいるんだよね。そんなお間抜けさんが。
だんだん空が紫掛かってきた
「懐かしいな…って、あ!
もう空に夕月が出ている。…そろそろ私も腹をくくって帰らないと。