デュラララ

□第七話
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二人が言葉のぶつけ合いをしている間に、俺は隣で顔を恐怖に染めている帝人くんの手首を掴む。
静雄に向いていた視線が何事かと俺に向けられるのを無視して、少し先の女の子の前まで引っ張っていく。
それは先程苛められていた子であり、逃げるタイミングも失ってこの状況にどうすれば良いのか困り果てているようだった。

目の前まで行くと、彼女は俺と帝人くんを交互に見遣る。
そのまま同じように彼女の手を取って、帝人くんと手を繋がせる。

「ほら、早く逃げた方がいいと思うんだけど」
気恥ずかしさと困惑をありありと浮かばせる彼らに、俺が臨戦態勢の友人達を指し示してそう言うと、彼らはハッとして大通りに駆けていった。
俺は彼らの背中を見送ると、そろそろコイツ等をどうにかしなければと思って二人に向き直る。

「静雄、俺には挨拶もなしなの?」
俺が彼に声をかけると野次馬が少しざわついた。
確かに、こんな状態の彼に(それも咎めるように)話しかける人物など、そうは居ないだろう。

「久しぶりだなぁミネ、元気にしてたか?
でも悪ぃけどよ、俺が臨也の野郎をぶっ飛ばすまで少し引っ込んでてくれ」
俺の方を見向きもせずに答える静雄に、ムッとして言い返す。

「何シズちゃん、俺よりも臨也の方がいいっていうの?
最近めっきり会ってなかったし、会ったと思えば俺のこと知らんぷりして…。
いいよ二人とも、喧嘩なり何なり二人仲良く≠オてれば」
俺の言葉は三分の一の純情と三分の二の冗談でできています。

臨也君は苦虫を噛み潰したような、簡単に言うとものすっごく嫌そうな顔をする。
一方の静雄は前半の言葉しか頭に入らなかったようで、俺の機嫌を損ねたとでも思ったのか怒りが見えなくなるくらいにはうろたえていた。
こういう純粋な所が臨也には絶対にないシズちゃんの良い所だよね。

俺が喧嘩も無事収まった事に少し達成感を覚えていると、人ごみの中でも目立つ巨体が近付いてくるのが見えた。
「オー、三人トモ。皆揃ッテ何シテル?
ウチのスシ、食ベニ来ルとイイネ。
皆デ豪華なオスシを食ベル、オ腹モ幸セもイッパイヨー」

「サイモン、わざわざ来てくれて悪いんだけど、俺達さっき喫茶店で軽食を取ったばかりなんだ」
「というか、昨日あんたの所で寿司食べたろ」
俺がサイモンに話しかけるとそれに臨也も加わる。

周りの野次馬は喧嘩が止めだと分かると帰っていった。
静雄は仕事の途中だと思い出して、人混みの中に紛れていく。
俺が彼の後姿を見送っていると、サイモンの勧誘を断った臨也が俺の手を引いて静雄とは反対の方向に歩き出す。

――デート再開。
俺は心の中でポツリと呟いて、彼に分からないくらい小さく笑みを零した。
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