短編・企画・過去拍手

□過去拍手其の弐
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はぁ…また雨か。
流石の私でも、こんなに天気が悪いんじゃ気が滅入っちゃうよ。
しかも、最近何故か心に溜まっていた心のもやもやが、強くなってくる。

「どうしたの?そんな顔して」
不意に後ろから声を掛けられた。
また勝手に人の部屋に入ってきたのか、こいつは。

「総司、この天気どうにかならない?」
総司はあははと笑った後、
「僕は神様でもなんでもないんだから、天気を変える事なんて出来ないよ」
と言った。

まぁ、私も本気で総司に天気を変えて欲しいと願った訳ではない。
ただ…
「総司には、私のもやもやを晴れさせる事は出来るのかな、って思っただけ」

そう言って私は、しとしとと降る雨から総司に目線を移す。
総司はさっきの私の言葉に驚いたのか、目を大きく見開いていた。
暫く、部屋に雨の音だけが響く。

最初に静寂を破ったのは、総司だった。
総司は柔らかく微笑むと、雨音に消されそうなぐらい小さな声で呟いた。
「じゃあ、僕が君の心を晴れされてあげるよ」

彼はその言葉を言い終えると同時に、私を抱き寄せる。
いきなりの総司の行動に私は何も抵抗できず、大人しく彼の胸の中に納まった。
総司の心臓の音が、やけに煩く聞こえる。

「僕は、君の事が好きだ」
耳元で囁かれた言葉に、私は顔が熱くなった。
返事は?と、総司は悪戯な笑みを浮かべる。
返事なんて分かりきってるくせに、この人はやっぱり意地悪だ。

彼に言われて、やっと自分の気持ちに気付いた。
それと同時に心のもやもやも晴れて、あたしも大好きだと伝えれば、にっこりと無邪気に笑う君が、とても愛おしくて。

彼の肩越しに見た空はすっかり晴れており、雲の隙間から降り注いだ光が、優しく私達を包み込んだ。

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