短編・企画・過去拍手

□過去拍手其の壱
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「うしし、姫っ!」
ベルが満面の笑みで私に飛び付く。
「王子、姫と居られてすっげー嬉しい♪」
なんて可愛い事を言うものだから、私の顔が一気に熱くなるのが分かる。

好きな人が隣に居てくれる。
私と居て笑っていてくれる。
そして何より……
幸せなコトバを囁いてくれる。
短い人生で、こんなにも幸せになれるとは思ってもいなかった。

もし君が居なかったなら、君と出会うことがなかったのなら、私はずっと独りだったかもしれない。
いや、ちっぽけな人間が誰にもかかわらずに生きていく事なんて、無理なのだけど。

彼と出会うまでは、私はただ遠くから、人という生き物を見ているだけだった。
生きていく為の、必要最低限の人としか接さなかった。
別に、弱くてつまらない人間にかかわりたくなんかなかった。
そんな事を考えている内、いつの間にか、心が扉の中にに閉じ込められてしまっていた。

でも、彼はそんな私の心を簡単に解いた。
もう開くことは無いと思っていた、扉を。
たった一言で。

「ずっと、お前の傍にいるから」
ベルはそう言った後、一応言っとくけど拒否権無ェからなと付け足して笑う。
拒否する事なんて絶対にしない事を分かっている癖に言う君は、ただ、幸せそうに笑う。

ねぇ、私の我が儘を一つ、聞いてくれる?
君が…ベルが、ずっと私の傍にいてほしい、それが私の願い。

「なぁ、俺の傍にいてくれる?」
そう言って不安げな顔をするベルに、さっき私に拒否権は無いって言ったのは誰かしら?と、悪戯っぽく言う。
言葉を詰まらせる君に私の心からの気持ちを伝えると、ベルは私に最高に甘いキスを落とした。

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