夏目友人帳

□第四話 主人公サイド
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あれから、夏目の事、ニャンコ先生の事、妖の事、そして友人帳の事を聞かされた。
私は全て知ってはいるがそれがバレると色々面倒な事になるので、話を聞いている間、相槌だけを打った。

その後、塔子さんが帰って来、夏目とニャンコ先生は今食事中だ。
私は、流石に塔子さんにご飯を作って貰う訳にいかないので、一人で夏目の部屋で待つ。

「稟、お待たせ。
――本当にこれだけで良いのか?」
戻ってきた夏目が持っているのは、二つの蜜柑。
「うん。不思議と、あまりお腹空かないし。
ありがとう」
私はお礼を言って夏目から蜜柑を一つ受け取り、むしり始める。

お腹が空かないのは、たぶん妖になったからだろう。
「こやつの場合、少しの食いモンでも強力な妖力に変える事ができるんだろうな。
…全く、元$l間のくせに」
そう言ってニャンコ先生は蜜柑を取ろうとしたが、その前に夏目が拾い上げた。

「ニャンコ先生はおれと半分ずつだ」
「なぬ!?
何故こんな小娘が一つで、私が夏目と半分こしなきゃならんのだ!」
「先生はさっき夕飯食っただろ?」

私は別にお腹空いてないし、第一蜜柑一個じゃあまり変わらないと思うんだけどなぁ。
そう思い、二人の会話に口を挿む。
「私は別に大丈夫だから、これ食べて」
「おぉ!聞き訳が良いな、小娘。
ほら夏目、こいつもそう言って…」
「駄目だ稟!」

私の言葉を、夏目はきっぱりと断った。
「本当はもっとちゃんとした物を食わせてやりたいんだが、悪いが今はこれくらいしか用意できない。
…おれのせめてもの気持ち、受け取ってくれ」
…こんな事言われて、受け取らない訳にはいかないじゃないか。

私はお礼を言うと、むしり終わった蜜柑を口に入れる。
少しすっぱくて甘い味と、蜜柑の香りが口の中に広がった。

それから、夏目の宿題を見たり、ニャンコ先生と戯れたりした後、夏目が電気を消して布団に入る。
ニャンコ先生はというと、先程妖怪仲間と飲みに行ってしまった。
私はそこらで適当に寝ようと思ったが、夏目が風邪を引くかもしれないと言うので、大人しく彼の布団に入る。
妖は風邪を引かないと聞いた気がするが、夏目の好意は有難く受け取っておく事にした。

流石に体勢は、背中合わせ。
だが、僅かに触れている背中から、夏目の体温が伝わってくる。
……温かい。

色々な事があって疲れたのか、私は目を閉じるとすぐに眠ってしまった。
そして、その日見た夢は――夏目の心の中にある、彼の過去の記憶。
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