夏目友人帳

□第三話 主人公サイド
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「変わったのは…服装と、髪と瞳の色だけか?
他に変化は…無いみたいだな」
「漆黒の髪に真紅の瞳とは…妖怪というより、悪魔だな」
「先生!」
夏目が、ニャンコ先生を睨みつける。

着物は、髪と同じ黒色をベースにしており、所々に桜が散りばめられている。
黄色の帯が、黒の着物に映える。
…私、本当に妖怪になったのか。

「それで、お前の狙いは何だ?
友人帳か?夏目の命か?」
「友人帳…?」
ニャンコ先生の言葉に、私は首を傾げる。
勿論何なのか知っているが、知らない振りをした方が、今は怪しまれないだろう。

「何だ、お前。友人帳を知らんのか」
「だって、君達と出会ったのはついさっきだし、ココに来たのも、私が妖になったのも、その時だから……」
私がそう言うと、ニャンコ先生は黙り込む。

と、今まで口を閉ざしていた夏目が、ポツリと呟いた。
「お前…行く当てはあるのか?」

私は、突然話が変わったのと驚いたのとで一瞬固まったが、すぐに言葉を返した。
「いや、今は妖の姿だし…第一ここがどこかも分からないから……」
「そうか…」

夏目がそう言うと、ニャンコ先生がハッとして彼に訊ねる。
「もしかして夏目!
こいつをこの家に置く気か!?」
「あぁ、その気だ。
それがどうかしたか、ニャンコ先生?」

話の流れから、夏目は私をこの家に住まわせてくれる気なのだろう。
…そうだとしたら、凄く嬉しい。
でも、そんなに甘えて良いのだろうか?

「どうかしたか、じゃないわ阿呆!
何故こんなどこの馬の骨とも分からないヤツを…!
食われても知らんからな!」
「だって、帰る場所が無くて困ってるじゃないか。放っておけはしないよ。
…それに、食われそうになったら、先生が助けてくれるんだろ?」
ニャンコ先生はまだ夏目を睨みつているが、それ以上の反抗はしなくなった。

「それで…お前はどうするんだ?
勿論、嫌なら強制はしないが」
夏目が、私に話を振る。
私は、首を横にブンブンと激しく振った。

「全然!でも、本当に良いの…?」
「あぁ。塔子さん――この家の人達に迷惑をかけないのなら」
その言葉に、今度は縦に激しく首を振る。
のたれ死ななくて済むという事より、私には夏目の優しさが嬉しくて堪らなかった。

「そうだ、名前を言ってなかったな。
おれは夏目貴志。こっちが、一応用心棒のニャンコ先生だ」
「一応とは何だ!」
「だって用心棒らしい事、何もしないじゃないか。
――後、おれがこの家でお世話になっている藤原夫妻」

「私は稟。
…よろしくね、夏目」
「こちらこそ、これからよろしくな、稟」
「フン、お人好しめ。
稟と言ったか。
変な事をしでかせば食うからな」

ゴンッ!
ニャンコ先生の頭に、夏目の拳骨が当たった。
「稟。ニャンコ先生の言った事は、気にしなくて良いからな」
「うん。…ニャンコ先生も、よろしくね?」

私がそう言うと、ニャンコ先生はそっぽを向いた。
…反論してこないから、私が居る事を認めてくれたのだろうか?
だとしたら、嬉しいな。

こんなにも温かい人(妖も)達との日々は、どんなに楽しく幸せな事だろうと思うと、自然と頬が緩み笑顔になった。
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