夏目友人帳

□第二話 夏目サイド
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いきなり倒れた彼女を、家に連れて帰る。
幸い、塔子さんは出掛けていた。

布団を敷き、彼女を寝かせてから数十分後。
「あ、起きたのか」
どうやら、目が覚めたようだ。
彼女が、虚ろな目でおれを見る。
まだ状況が飲み込めてないらしい。

「あれ?なんで…」
「あの後、お前は倒れおったんだ。
それで、夏目がここまで連れてきたのだ」
彼女はそれを聞くと、体を起こし、おれに礼を言う。

「ありがとう」
「いや…」
だが、おれにはそれより気になる事があった。
……人か否か、だ。

「それより、訊きたい事があるんだ」
単刀直入に訊くのもあれだし、何より妖じゃなかったら、どうしよう?
だが、はっきりしておかないと、友人帳やおれ自身が危ない目に遭いかねない。

「え、と…人、なのか?それとも……」
おれが言葉を選びながら、続ける。
別の何かなのかと言おうとした時、おれより早く、彼女が口に出した。

「分からない」
彼女のきっぱりと言い放たれた言葉に、おれは目を丸くする。

「この期に及んで白を切るつもりか!
ええい、夏目。こんな奴私が食って…」
「止めろ、先生」
おれが呆気にとられていると先生があんなことを言い出すものだから、おれは先生を制止した。
人は勿論、妖であろうと、何も聞かずに食うのは良くない。
…それに、おれはまだ彼女に訊きたい事がある。

「…それで、分からないって?」
おれが彼女に尋ねると、彼女は素直に答える。
「分からないの、私にも。
そうなのか違うのか、分からない。
…でも、人間だったんだよ?」
最後の言葉がどこか悲しげに聞こえたのは、おれの気のせいだろうか?
それにしても、嘘をついているようには、やはり思えない。
本当に分からないのだろう。

「分かる所まででいい。
詳しく聞かせてくれないか?」
おれが促すと、彼女は話し始めた。

「私は学校から帰る途中で、俯いている顔を上げたら、知らない所…さっきの道に居たの」
「それでおれに遇って、今に至るって訳か。
…って、ちょっと待て。
顔を上げたら知らない所に、って……」
どういうことだ?そう訊こうとしたが、彼女は俯いてしまう。
…やはり、彼女は何も分からないのか。
結局、分かったのは経緯だけだ。

「おい。今は人の姿なんだろう?
妖の姿には戻らんのか?」
ニャンコ先生が、突然場の雰囲気を壊すように言う。
確かに、妖なら人の姿から本来の姿に戻る事が出来る。
今言う事では無い気がするが。

「でも…できるのか?」
何せ、自分が妖かどうかも分からないのに。
妖だったとしても、方法は知らないだろう。
だが、彼女は「やってみる」と言うと、目を瞑った。
すると…

ボンッ!

彼女が、白い煙に包まれる。
煙が晴れると、そこには着物を着た彼女の姿が在った。
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