デュラララ

□第六話
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もう四月に入ったとはいえ、真夜中になると冷え込むのは当然なわけで。
何も羽織るものを身に着けていない俺が思わず「寒い」とぽつりと漏らすと、臨也は呆れたように溜息を吐いて自分が着ていたファーコートを貸してくれた。
そのまま歩調の遅い俺に合わせて、肩を並べて歩く。

――こういう所は紳士で優しいのに。
というか、臨也くんは変な趣味さえなかったら完璧な人間なんじゃないの。
見た目も頭も良いし、俺に代わって家事もできるし、高収入だし、面倒見が良くて気遣いもできる。
新羅はどうして臨也の所に居るのか理解できない、少なくとももっと適当な人物がいるって言ってたけど、これだけの好物件は中々ないよ。
…まあ、ほんの少しある欠点が玉に瑕というか、むしろ臨也君のいい所を台無しにしている感がしなくもないけど。

公園の中に入ると、街頭の下、真っ黒の影のようなライダースーツを着ているからかやけに目立った猫耳ヘルメットが目に飛び込む。
もう時間が時間なので周りには俺達以外誰も居ない。

臨也とセルティは一言二言言葉を交わすとすぐに作業に取り組んだ。
俺は近くに自販機を見つけて、何か温かいものでも買おうと小走りで向かう。
臨也はそんな俺をちらりと一瞥して、それから俺の駆けていく方を見て俺が何をしようというのか理解したようで、特別言及してはこなかった。

財布と携帯だけはポケットの中に突っ込んでおいてよかった。
俺は自販機の前で数十秒悩んだ後、ココアのボタンを押す。
ガタンと音を立てて出てきたそれを懐炉代わりに手を温めて、戻ろうかと半ば振り返ったとき、思い立った。
――臨也くんにも、何か買っていった方がいいのかなあ。

また自販機と向かい合う。
彼があの時何も言わなかったということは、別に買ってきてほしいものは無いと言っているのと等しい。
「でもなぁ」
コートに顔を埋める。仄かに臨也の香りがする。

「やっぱり、買った方がいいよね」
俺にこれを貸したせいで薄着の彼は、ちっとも寒そうな様子を見せないけれど――俺が人より寒がりなのもある――それでも親切心には好意を示すのが当たり前だ。

俺は再び小銭を取り出すと、それを自販機に入れる。
――何を選べばいいんだろう。
温かいのがいいよね。臨也、甘いのはあまり飲まないしコーヒーでいいかな。

両手に缶を持って、臨也とセルティの所まで戻る。
何か二人で会話をしていたが、俺が来ると「じゃあ、」と臨也は会話を打ち切って出口へと歩き出した。
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