デュラララ

□第三話
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最後の一人が自己紹介を終える。
各自名乗り合うと、臨也が沈黙が訪れる前に口を開いた。
「皆揃ったことだし、飲み物でも頼もうか」

臨也の提案に従い皆それぞれ好きなものを注文する。
臨也は設置された受話器から手を離すと、再び目の前の三人に向き直った。
「とりあえず、死ぬ前に何かしたい事ってあるかな?」
ミネは何の反応も示さなかったが、臨也はそれに構わずに言葉を続ける。

それを自分に向けられた言葉ではないだろうと判断したミネは、部屋の隅で壁に寄りかかりながら座ったまま、二人の女を観察する。
どちらも二十代の半ば頃といった年齢だ。
特に暗い表情なわけでもなく、どこにでもいる、町で普通に見かけるのと同じような人間。
まず一目見て、彼女たちが自殺志願者だとは思わないだろう。

ミネが会話をぼんやりと聞き流していると、いつのまにか話題が自殺の理由に変わっていた。
一人は就職難。一人は失恋。
彼女たちが話し終わると、臨也の目線がミネへと向かう。
その目は愉快そうに歪んでいた。

嘘だろうが何だろうが、彼がどんな理由≠述べるのか興味があるに違いない。
彼はよく、臨也の斜め上をいく発言をする。
それは臨也にとって人間を理解する上で新たな発想を与え、彼の人間愛により深みをもたらす。

あるいは、単純に、知りたいのだ。彼の考え方が。彼の感情が。
見え透いたばればれの嘘を吐くほど、彼は馬鹿ではないし、そこまで臨也を失望させるような人間ではない。
たとえ大方が嘘偽りであったとしても、後の残りが知れれば、それでいい。

臨也はそんな、人間愛とミネ自身に対する感情を抱えながら、彼が自殺理由≠ノついて語るのを待っていた。
その顔は、先程から顔に張り付けている万人受けする笑顔とは別に、鋭い視線でミネを見据え、挑発的に口元を歪ませつつも、ある種友人に見せるような悪戯っぽい表情を湛えている。

ミネは皆の視線に耐えかね口を開こうとした。
彼の唇が数ミリ動いたとき、突如部屋に乾いた音が三度鳴り響く。
どうやら店員がドリンクを持ってきたらしい。
一番入り口近くに座っていた臨也がそれを受け取るのを確認するかしないうちに、彼は話し出した。

――さすが。よくわかってる。
皆の視線が話し手のミネに集まっている間に、臨也は自分とミネ以外の飲み物に薬を仕掛ける。
それを全員に手渡すと、自分もそれに口をつけながら、彼の話に耳を傾けた。

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