デュラララ

□第二話
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「臨也、そういえば俺なんて名乗ればいいんだっけ」
「白猫」
「…臨也は?」
「奈倉」
「なんで俺は人名じゃないの? せめて名前にしてほしかったんだけど」
「いいだろ。どうせネット上のハンドルネームなんだし。
他の二人も、少なくとも人名ではなかったよ」

それでもまだぐだぐだと文句を言っているミネを放って、臨也は壁に設置された時計をちらりと見遣る。
時刻は9時を回った辺りだ。約束の時間は10時なので、まだ大分時間がある。

彼らがいる場所は、とあるカラオケボックスの一室だった。
ミネは先程までの不満は全て捨て去ったのか、選曲用の機会を弄りだした。歌うつもりらしい。
「臨也は歌わないの?」
「ああ。そのために来たわけじゃないし。
君は好きにするといい、どうせまだ時間があるんだから」

彼らがこの場所を訪れた理由は、自殺オフに参加するため。
もちろん、自殺をする気は甚だない。
臨也は人間が好きだ。
そしてこの自殺オフは、彼が愛してやまない人間を知るための一方法であり、彼が今はまっている趣味の一つでもある。

入り口近くに座り、背もたれに体を預けながら、臨也はミネが気持ちよさそうに歌っている様子をなんとはなしに眺める。
彼はこういう類のオフ会に参加するのは初めてだ。
正直この趣味に飽きが来ていた臨也は、試しに彼を参加させてみることにした。
彼の存在により、今まで起こらなかったアクション――実際に自殺者が出ることを期待して。

思い立ったが吉日、臨也は早速自殺サイトの掲示板でオフ会の参加者を募った。
そして臨也がそこに、「白猫」という、架空であり、ミネとなる人物を投入する。
かくして、他の参加者二人と、臨也、そして臨也が演じるミネの四人で、打ち合わせの元、今日この場所でのオフ会が決定したのである。

ちなみにミネ本人にそれが伝えられたのがつい昨日のことであり、ミネにとってはなんとも迷惑な話となった。
それでも渋々ながら臨也に付いてきたのは、彼自身も好奇心を擽られる所があったのか、はたまた世話になっている臨也に反対するほどの理由がなかったのか。

何はともあれ、楽しくなりそうだ。
そう思い、臨也は酷薄な笑みを浮かべるのだった。

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