短編・企画・過去拍手 U

□過去拍手其の三十八
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「おはよう」
私はまだ夢の中に居るのだろうか。
うん、そうだ。きっとそうだ。間違いない。
でなければ、アイツの無駄に整った顔が爽やかスマイルでこんなにも度アップに現れるはずがない。
とんだ悪夢だな、これは。

「ちょっと、現実逃避して二度寝しようとしないでよ。犯すよ?」
「・・・」
「そんなに見詰められると照れちゃうじゃない」
「見詰めてねーよ、睨んでるんだよ、この不法侵入者」
「ちゃんと玄関から鍵開けて入ってきたのになぁ」
もう突っ込むのやめよう。
自分の体力が削り取られるだけだ。

「で、俺に言う事は?」
「退け」
「他には?」
「帰れ」

「・・・本気で襲っちゃうよ?」
「どうしてあたしがアンタに襲われなきゃなんないのよ。
というか半分襲われてる状態じゃない」
寝ている私の上に四つん這いになっている臨也。
しかも布団は剥ぎ取られている。
なぜこうなる前に気付かなかったのだろうか私のバカ。

「今日何の日か、分からないなんて言わないよな?」
「GW二日目。みどりの日」
「で?」
「で、って言われても・・・」
私がそう呟いて眉根を寄せると、臨也は今までの120円のスマイルを消し去った。
代わりに冷たい表情を浮かべ、射抜くような目で私を見つめる。

「今日俺、誕生日なんだ」
「へ、へぇ〜!
それは良かったね、おめでとう」
「うん・・・」
怒気を孕んだ声色に、冷や汗が次から次へと湧き出してきた。

「で、それだけ? プレゼントは?」
「いや、その事実今さっき知ったところなんだけど・・・」
「少し調べればいくらでも分かることだろう?
俺に聞くなりさ」
「あ、はは・・・」
何だか凄く理不尽な事を言われているような気がするが、私の口からは乾いた笑みしか出ない。

「君の誕生日には、欲しいもの調べて、プレゼントしてあげたのになぁ」
「うっ・・・」
確かにそうなんだけど!
結構高いの貰ったけど!

「・・・」
「・・・」
「わっ、分かったから、今すぐ買ってくるから、何が欲しいの?」
「君」
「・・・は?」

「だから、君が欲しい」
「は? ――って、服脱がすな!」
「ってことで貰うからね?」
「え、ちょ、待って、待ッ――!!」

抵抗も虚しく、私は臨也君に美味しく食べられたのであった。

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