夏目友人帳 U

□第二十四話 主人公サイド
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「彼が夏目、夏目貴志君」
――ああ、これは。
「しばらくの間たのみますよ」
夢。
私の見ている夢。
そして、夏目の過去。

「・・・何だってあんな遠縁の子をうちが・・・。
いっそ施設にでも」
「世間体がある。
とにかく、うちは半年も預かったんだ。
次はそちらの番でしょう」

ぼそぼそと話してはいるが、夏目には聞こえているようだった。
今度は無精ひげを生やし髪が少々ぼさぼさした男の元に預かられることになったらしい。
季節は夏真っ盛りの頃らしく、セミが勢いよく鳴いている。
夏目は小学生後半くらいの年齢で、左目に包帯を巻いていた。

「・・・あのケガどうしたんです?」
「同級生とケンカしたらしい。
『嘘つき』だって言われたとかって・・・・・・」
「・・・おい、そういうの困るよ・・・」

「あ、伯父さん」
夏目が上の方を向きながら呼ぶ。
「伯父さん家の天井に誰かいるよ」
確かに、天井の隅の方、そこには天井に寝転がっているように佇む着物を着たヒトの上半身が見えていた。

「どうやってあんな所に登ったん・・・ん?」
夏目の方を向き驚き青ざめる人たちを見て、夏目は気付いたのだろう。
それが人間ではないということに。

「・・・あ、やっぱり気のせいで・・・」
夏目がそう言うのと同時に、ずる・・・と嫌な音がする。
その妖を見ると、まるでろくろ首のように首が数十センチ程伸びて頭が垂れ下がっていた。
「う・・・うわぁーっっ」
それに驚き声を上げるのも無理もない話だ、見える者には。

場面が暗転し、聞こえてきたのは、
「・・・そんなにうちが気に入らないのか!?
だからそんな気味悪い嘘をつくのか!!」
夏目を非難する声だった。



「夏目」
「ん・・・」
ニャンコ先生が夏目を呼ぶ声に、私は目を覚ます。
彼も起きたらしい。

「うなされていたぞ」
「・・・・・・うう?」
「またガキの頃の夢を見ているな」

目を開けると、夏目の上にずっしりと乗っかるニャンコ先生の姿が目に入った。
夏目の目線ではきっと一面ニャンコ先生色だろう。
横から見ているだけでもかなりの圧迫感がある。

「うわぁ」
夏目はそう叫ぶのと同時にニャンコ先生を殴り飛ばした。
先生はゴッと鈍い音を出して飛ばされるとボタっとお腹から床に着地する。
いくら寝起きで吃驚していたとはいえ、そこまでされるとは少々可哀想だ。
ニャンコ先生も一応夏目を気にかけてのことだっただろうに・・・。

「・・・何だ、ニャンコ先生か。ごめん」
自分が咄嗟に殴り飛ばしたものを認識した夏目が、衝撃で少し痙攣している先生に言う。
そこからいつもの喧嘩が始まったのだった。
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