長編まとめ

□一巻
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「見つけた」
隣を歩く臨也がそう言って口元に弧を描く。
何を、と思って彼の視線の先を辿ると、ははーん、正臣くんか。
そしてその傍らには、彼とは全く雰囲気の異なる少年。

――初めて見る。あれが帝人くん、ひいてはダラーズの創始者か。
幼い顔立ちをした、大人しそうな男の子。

俺が彼を観察しているうちに、臨也はすたすたと彼らの元へ歩み寄る。
慌てて後を追いかけると、辿り着いたのは臨也が彼らに声をかけた後だった。

「久しぶりだね、紀田正臣君」
振り返った正臣くんは、なんとも苦々しい表情をしていた。
この子は本当に臨也のことが嫌いだなあ。
まあでも、そこまでわかりやすい反応をすると、ほら、隣の帝人くんも驚いているじゃない。

やっとのことで必要最低限の挨拶を発した正臣くんがかわいそうになってきたので――いや、遠巻きに彼らを眺めているのも飽きたので、俺も存在を主張すべく、会話にまでも発展していない会話に割って入る。

「や! 正臣くん。元気だった?
って、もしかしてその制服、来良の?
あそこに入ったんだ、ということは俺の後輩だねー」
登場早々捲くし立てた俺に、二人は揃ってきょとんとした表情を向ける。

「ミネさん、久しぶりっすね。
ええ、なんとか合格できましたよ」
そう言って、先ほどとは打って変わって笑顔を見せる正臣くん。
どうだ臨也。まるで態度の違う正臣くんを見て俺に嫉妬すればいいと思うよ。嘲笑ってやるから。

「そっちの子は? 友達?」
俺がそう振ると、俺と正臣くんとの会話を興味深そうに聞いていた少年へ皆の視線が向く。

「ええ。小学校からの幼馴染で…」
嫌煙する臨也の手前だからだろうか、彼の紹介もどこかうやむやだ。
ちらりと正臣くんが窺うように臨也を見る。

「俺は折原臨也。よろしく」
それを好機と捉えたのだろう、今まで口を挟まなかった臨也が帝人くんに向けてそう放った。
対する帝人は、一瞬だけ目を見開くも、同じく自分の名を名乗る。
正臣くん、臨也のこと前もって帝人くんに話していたのかな。
…もしかして俺のことも何か言ってたりして。

「ちなみに俺は夜霧稟だよ。よろしくしてくれると嬉しいかな」
臨也が帝人くんの苗字をエアコンみたいな名前と言って二人をポカンとさせた後に、俺が笑顔で自己紹介をする。
すると帝人くんが慌てたように俺に向き直った。
「あ、どうも。こちらこそよろしくお願いします…」

「じゃ、俺達はこれで。人を待たせてあるから」
臨也がそう言って歩き出す。
「二人とも、またね。今度お茶でもしよう」
俺もそう言って、臨也と並んで目的地へ歩き出した。
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