長編まとめ

□番外編其の一
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それは、夏目が田沼と友達になって少し経った頃の事。

「夏目様」
「…ん?」
窓の外から聞こえた声に、夏目が反応する。
見ると、ひょっとこの様な面をした妖が浮いていた。

「…何の用だ?」
「夏目様にお願いがあって来たのですが、どうか聴いて頂けませんでしょうか?」
ニャンコ先生から小物の妖だと聞いた夏目は、ひょっとこ妖を部屋に入れる。
「…で、お願いっていうのは?
名前を返して欲しいのか?」
「いえ、私は友人帳に名は載っていませんので…」

じゃあ何で夏目の所に来たのだろうか。
また坊さん退治みたいな事をしてほしいとか?
私がそんな事を思っていると、妖は何かを取り出して―――
「これを見ていただきたいのです」
夏目の前に、そっと置いた。

「ん?……刀?」
それは、柄から鞘まで真っ黒の、懐刀。
「はい」
「何でそんなものをおれに?」
「実は――」

 ***

「にゃあお」
「む…?猫?」
「にゃあお」
「いや、尾が三つある。妖か。」

「にゃあお」
「刀なんぞ銜えおって。
妖かといっても容姿は猫なのだから、魚を銜えていろ」
「にゃあ…」
「…なんだ、私の言葉が通じるのか?
じゃあその刀、私に寄こしてくれ。
換わりに、さっき取った魚をやろう」

「ふん…行ったか。
どれ、どんな代物か少し見てみよう。
―――む?抜けぬ、抜けぬぞ!」
「どうされたんですか?」
「ひっ!」
「お困りのようですね。
…あぁ、そうだ。この先の町に夏目という、妖の見える人間が居る。
噂じゃかなりのお人好しだと聞きますから、助けて貰えるかもしれませんよ?」

 ***

「それで、おれの元を訪ねてきたと」
「左様でございます。
前々から夏目様の噂は聞いておりましたので、夏目様のお力ならこの刀を抜けるかもしれぬやと」
「抜けるかどうかは分からないが…試してみる」
夏目はそう言うと刀を手に取り、柄に手をかける。
そして引き抜こうとするが…

「…抜けないな」
柄は、全く動かない。
と、そこへニャンコ先生が寄ってきた。
先生は刀へ顔を近づけると、口を開く。
「これは…妖刀だな」
「妖刀?」
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