series【炎】

□Fourth Mission.『襲撃(後編)』
1ページ/8ページ




チームと松平の私兵で行われた合同の打ち合わせも終わり、何回か演習も行われ、いよいよ当日である。
チームを含め、各警備をする者が配置に着いてる中、近藤、土方、山南の三人は在る部屋へ向かっていた。

「近藤さん、外はいいのかよ。」

「あぁ、一目見たら、直ぐに戻るさ。
 それに永倉君と平助に頼まれてな。」

「何を頼まれたのですか?」

「炎君の写真だ。」

「「・・・」」

その一言に山南と土方は呆れてモノが言えなかった。
三人が そんな会話をしていると、目的の扉の前に着く。
土方がノックをすると部屋から返事があったので、中に入ると・・・

「「「・・・」」」

ドレスアップした炎が控えていた。
今回の仕事で沖田と共に松平の護衛となっていたのだが、ただの護衛ではなく・・・
松平のパートナー役に扮装し護衛を行う事になり、炎はこのような姿になっていた。
部屋に入り、無言で見つめてくる三人へ炎は声をかける。

「どうした?」

「いや、見違えて驚いた!」

近藤が満面の笑みで答える。
それに続き、山南も。

「そうですね。
 とてもお似合いですよ。」

「やめてくれ。
 馬子にも衣装だ。」

「そんな事ありません。
 とても綺麗です。」

炎は目を細め微笑みながら話す山南を見返す事が出来ず、顔を逸らすと視界にジッと見つめる土方が目に入る。

「土方さん、どうした?」

「いや・・・」

炎は少し顔に赤みが指す土方を不思議に思いつつも気にしない事にした。

「所で・・・」

「何でしょう?」

炎の言葉に山南が反応する。

「近藤さんは何を・・・?」

「気にしないで下さい。」

近藤は携帯を炎へかざし、写真を撮っているようだった。
何枚か撮影した後、楽しそうに携帯を操作している。

「それよりも、具合はどうでしょうか?」

「あぁ、靴がな・・・」

眉間に皺を寄せ、足元を見る。
少し高めのヒールをドレスに合わせて履いていた。

「いざという時は、ヒールを折るしかありませんね。
 あと例のボディスーツは?」

「其方は問題ない。」

「AIZUコーポレーションが開発した、グレードV相当の防弾機能付ボディスーツですが、その形状の為に実際のグレードはもう少し低いでしょう。」

「相変わらず手厳しいな、山南君は。」

そう言って部屋へ入って来たのは、AIZUコーポレーションの松平だった。
部屋に居た四人は慌てて頭を下げる。

「申し訳ありません。
 出過ぎた口を・・・」

山南が先程の台詞について謝罪すると松平は。

「いや、それは事実ゆえ、問題は無い。
 実は、それ以上に問題が有るのだ。」

「問題とは?」

「おい、炎!」

反応する炎に対し、土方は咎め様とするが、松平はそれすらも制し・・・

「性能的には、グレードVより落ちるモノの問題は無い。
 コスト面で、どうしても折り合いがつかず、製品化出来なかったのだ。」

確かに、今回の護衛・・・作戦が決まり、炎は一度AIZUコーポレーションを訪れ、採寸や体の動きを細かくチェックされた。
もし、それを元にし作るのであれば、1着作るのに膨大な手間がかかるだろう。
しかし、そのチェックのおかげで防弾機能を備えたボディスーツとはいえ、動きを封じること無い。

「開発には成功したが、製品化に失敗したというわけだ。」

「ということは、此れはかなり高いものだろう?
 いいのか?」

「今日、初仕事と聞いたからな。
 私からの激励を込めたプレゼントと思って貰えれば。」

「・・・わかった。
 有難く頂こう。」

松平は満足げに頷くと、ついでに腕時計を見る。

「おや?
 もう、こんな時間じゃないか。」

「おぉ、それはいかん!
 松平さん、私は此れで失礼します!」

松平の言葉に近藤も時間を確かめると、慌てて部屋を出て行く。

「さて、我々も参りましょうか?」

山南も声をかける。

「どうぞ、レディ。」

そう言って、手を差し出す松平に戸惑う炎。
その様子に苦笑しつつ・・・

「今宵、君はパートナーでもある。
 それをリードするのは私の役目だ。」

「いや、しかし・・・」

「私に恥をかかす気か?」

助けを求める様に土方や山南の方を見るが、二人とも黙ったままである。
炎はソレで諦め、松平の手を取ることにした。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ