Series『現桜』

□番外編The 5th.「The day before the White Day」
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薄桜学園保険医兼事務長 山南敬助は悩んでいた。
他人から見れば、対した事がないのだが・・・

『どうしたものでしょうか・・・』

手帳の日付を見て、小さく溜息を付く。
目線の先は3月の日付。

『平日ですしねぇ。』

そう、あと1週間と迫ったイベント・・・ホワイトデー。
在り来りに考えれば、お返しのお菓子と少し洒落たレストランでもと思うわけだが、相手は言わずと知れた薄桜学園2年 葛木桜華だ。
お菓子は余り好まないし、好む食事もレストランより焼肉やラーメン屋・・・時には部活の帰りで食事に誘うと牛丼屋で大盛りを頼むような彼女である。
折角、先月のバレンタインで頑張ってくれた桜華の為に、本当に喜ぶモノを返して上げたい。
そう思うと、山南は何も浮かばず、再び溜息を吐いた。

「山南先生、どうされましたか?」

そんな山南に対し、不意に声をかけてきたのは、保険委員 山崎烝だった。

「あぁ、山崎君。
 何でも有りませんよ。」

山崎に声をかけられ、山南は今が放課後だったのを思い出した。
山南は何時も通りに返事をしたつもりであったが、それに対し怪訝な顔をする。
それを見て山南は・・・

「本当に何も有りません。
 それより今日は、もう何も有りませんから、帰って下さっても問題ありませんよ。」

何時もの微笑みを浮かべながら話す山南に対し、山崎は一呼吸置いてから、返事をする。

「わかりました。
 では、失礼します。」

「はい、お疲れ様でした。」

山崎は保健室を出ると、携帯を取り出し、電話をかけ出した。


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