Series『現桜』

□番外編The 8th.「ChristmasDinner」
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千鶴は保健室の魔・・・元い、薄桜学園保険医兼事務長 山南敬助に呼ばれ、保健室へ訪れていた。

「お忙しいところ、申し訳ありません。」

山南は千鶴に淹れたての紅茶を渡しながら話しかける。

「いいえ、部活も引退しましたし。」

千鶴も3年になり、受験の為にマネジャーをしていた剣道部も引退し、塾と勉強の日々。
この日は塾も休みで、図書室で勉強していた所に、山南から呼びかけられた。

「先程も言いましたが、ちょっとご相談と言いますか、お願いになるかもしれませんが、お話が有りまして。」

「はい。」

少々歯切れの悪い物言い山南を珍しく思いながら、手にした紅茶を口に付ける。

『美味しい。』

幾度か山南の紅茶を飲む機会が有ったけど、下手なカフェより美味しい紅茶を飲ましてくれる。
自ら飲みには来れないけど、こうして ちょっとした時に飲める事が楽しみになっていた。

「紅茶は口に合いますか?」

「はい!
 とても美味しいです!」

「それは何よりです。
 所で本題なのですが・・・」

「何でしょうか?」

「葛木君の事なのです。」

「先輩に何かあったのですか?」

千鶴は少々慌てた口調になる。

「あぁ、そんなに慌てないで下さい。
 別に何かあった訳では有りません。」

「す、すいません。」

「いいえ。
 本題に戻りますね。
 少々気恥ずかしい話なのですが、もうすぐクリスマスですよね?」

「あ、はい。」

「今年は平日なので、夜にディナーでもと思って居るのですよ。」

「ソレは・・・先輩と、云う事ですよね?」

「えぇ、その通りです。
 まぁ彼女と夜に外食を全くしないわけでは無いのですが、なにぶん・・・」

「・・・」

千鶴は何と無く山南が言葉を濁した訳が理解した。
何度か過去に桜華と食事を共にしたが、食べる量が半端ない。
部活の皆で一緒に食べれば周りの男子学生と同量をペロリと食べ上げるし、二人で外出した時は正直、桜華の選ぶ店が…
それはそれで普段、自分では行かない店なので、千鶴にとっては楽しい体験なのだが。

「コホンッ。
 そんな彼女ですけど、折角ですから、其れなりな所へ今回は連れて行こうかと思って居るのですよ。」

「ソコ迄は分かりましたが、私への相談が繋がらないのです。」

「あぁ、少々回りくどくて申し訳有りません。
 ソコでお願いが有るのですよ。」

「はぁ・・・」


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