series【炎】

□First Mission.『捕獲』
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「土方君、そちらはどうですか?」

「山南さん、こっちはOKだ。
 どうする?早めるか?」


「お手数ですが、今一度山崎君に潜って貰える様にお願いできますか?」

「どういう事だ?」

「気になる事がありまして。
 もう一度、できれば直近のセキュリティシステムログを見て頂きたい。」

「わかった。調べさせる。」

「お願いします。」

インカムで会話を終えた山南へ、共に隠れていた原田が声をかけた。

「山南さん、山崎に調べてもらうまでもねぇんじゃ?」

そう言いながら、原田は目線で建物側に倒れている人影を目線で指す。

「いえ、念には念を入れてです。
 斎藤君、どんな様子でした?」

ソコに倒れている者の様子を見に行っていた斎藤が戻ってきていた。

「二人とも矢のような物が首に刺さっておりました。
 恐らく生きてはいないものと思われます。」

「そうですか・・・
 とりあえず山崎君の報告を待って判断しましょう。」

今回の仕事はシンプルだが大掛かりな物だった。
ある工場を一つ潰す事、そして、その工場で研究製作されている物のデータとサンプルの取得。
お陰で久しぶりにチーム、全員が参加する仕事となった。
作戦は単純、攻撃部隊と潜入部隊に別れ、攻撃部隊が派手に攻撃しつつ、潜入部隊がデータとサンプルを手に入れる手はずになっていた。
そこで潜入には、臨機応変な対応ができる原田、隠密的な動きが慣れている斎藤、そして山南というメンバーで行うことになり、作戦へ移る為に目的の建物へ近づいていったのだが・・・
そこで見つけたのが例の倒れている人影というわけである。

「山南さん、山崎です。」

デッカーの山崎から通信が入る。

「どうですか?山崎君。」

「侵入者が居る模様です。」

「だよなぁ。」

山崎の言葉に、原田が反応をする。

「状況を教えてください。」

「自動監視プログラムを起動していたのですが、相手に偽装プログラムを使われており、すいません、見落としておりました。
 山南さん達が到着する数分前、監視カメラが弄られた形跡があります。」


「では、そのタイミングで、別の侵入者が入った可能性があると?」

「はい、後にも先にも偽装されていたのは先程お伝えしたタイミングのみ。
 それも短い時間です。
 入ったまま、未だ出てきて無いと判断していいでしょう。」


「わかりました。」

今の山崎が伝えた内容を聞いていた土方が山南に声をかける。

「山南さん、どうする?」

「そうですね。」

山南はしばし考えるが・・・

「作戦は続行しましょう。」

「なら、そっちを増援した方が・・・」

「それも無用です。
 侵入者は恐らく、腕は立つでしょうが単独でしょう。
 それに下手に人を増やして、此方の潜入が知られるのは得策ではありませんし、そもそも潜入に向くメンバーがおりませんから。」

「確かに・・・
 じゃ、気をつけてくれよ、山南さん。」


「では計画通りに。」

山南はそう言って通信を切る。
側にいた原田と斎藤に向き直り・・・

「今のは聞きましたね?」

「あぁ。
 元々二手に分かれる話だったが、じゃ侵入者が居るってことで一緒にいくのか?」

「いいえ、それも変更しません。」

「しかし、それでは山南さんが。」

斎藤が少々心配気に意見を述べるが、山南は・・・

「大丈夫です。
 私は・・・これを連れて行きますから。」

山南が地面へ手の平を向け、集中した様子を見せると、地面から半透明の何かが盛り上がってきた。

「精霊か・・・」

メイジが呼び出す精霊は、四大元素に基づくもの。
建物内に入るので、山南は先に地面から地の精霊を呼び出した。
精霊であれば、相手が基本的にシャーマンやメイジなどの魔法を扱える者でも無い限り、通常の武器では傷つけることが出来ず、一方的に攻撃ができる。
だが呼び出す時、召喚者に負担をかける事があり、また山南は或る事情でその負担が大きかった。

「ふぅ・・・」

少し青ざめた表情で山南は息を吐く。
その様子を見て、斎藤が声をかける。

「大丈夫ですか?」

「これぐらいなら問題ありません。
 さて・・・そろそろ時間ですね。」

山南が腕時計を見ながら話すと、工場表側の方角から爆音が。

「始まったな。」

「ええ、我々も行きましょう。」


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