Series『現桜』

□番外編The 6th.「卒業旅行」
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進学が決まり、あとは卒業を迎えるだけとなった或る日ー…
薄桜学園保険医兼事務長 山南敬助が、同じく3年1組 葛木桜華へ尋ねた。

「卒業をしたら、旅行へ行きませんか?」

「旅行?」

「えぇ・・・」

山南から振ってきた話題というのに、桜華は歯切れの悪さを感じ、少々不信感を覚えた。

「旅行はいいんだけど・・・
 でも、忙しいんじゃないんですか?」

桜華の疑問通り、卒業を迎える3月は期末ということもあり、事務長として仕事は山盛りある。
更に言えば、桜華自身、4月から山南と同居する為の引越もあるのだが・・・

「そうですね。
 ですが、如何しても共に住む前に・・・」

「如何いう・・・」

「北へ・・・
 函館へ行きたいと思っています。」

「函館・・・それは!」

桜華は気が付いた。
函館は新選組最後の地。
そして前世の自分が最後を迎えた場所である。

「先生。
 もう、その事については・・・」

桜華は確かに前世の話を最初に聞いた時、知りたいと思ったし、知らないといけないとも思ったが、こうして過ごす内に知らなくても今を大切にする事・・・
それが前世の罪の意識を持つ山南の為になると思い始めていた所であるのに・・・

「桜華。
 貴女の言いたい事は分かります。
 ですが、私が許せないのですよ。」

山南の言葉で、桜華は理解した。
許して欲しいのだ、山南は。
頭では山南も分かっているのだろう。
けれど感情がついて来ない。
だからこその申出。

「わかりました。」

そんな山南に自分が出来る事は、話を聞き許し・・・
何を知っても、この気持ちは変わらない事を伝えれば良い。
桜華は心の中で自分に伝える様、強く思う。

「有難う御座います。」

少し緊張しつつも礼を言う山南を見て、桜華は・・・

『前なら、自分の中で溜め込むタイプだったのに・・・』

コレも少し自分に甘えてるのかもしれない何て思うと、少し嬉しく思えた。



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