Series『現桜』

□番外編The 6th.「卒業旅行」
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食事は五稜郭近くの北海道エリアにしか無いファーストフード店で済ませた。
山南らしからぬチョイスに桜華が疑問を口にすると・・・

「貴女が喜びそうだったので。」

コレからの事を考えると、山南にとってソレ処ではないだろうと思うが、そんな気遣いが嬉しかった。
それから、二人は其の足で五稜郭タワーへ向う。

「綺麗に星型だ。」

タワーから見下ろす五稜郭に対し、桜華は素直な感想を述べる。

「外国の技術を取り入れ、当初は外敵に備えて作られましたが・・・」

「何か含みがあるような・・・」

「えぇ、費用不足、旧式の城郭・・・
 結局、負ける要素が十分にありえたわけで。」

「それが・・・旧幕府軍、最後の砦となるわけですね。」

「えぇ。」

「そして、私も彼処に・・・」

「では、行って見ましょうか。」

タワーを降り、五稜郭公園の敷地内に入ると直ぐに中心の函館奉行所へ向う。
函館奉行所を前にして桜華は固まった様に黙って見上げた。
暫く山南も桜華の様子を見ていたが・・・

「何か感じる所がありますか?」

「・・・」

桜華はどう返答するか迷う。

「大丈夫です。
 正直に言って下さい。」

「京都の八木邸とか西本願寺は懐かしさと安心感?の様な気持ちがありました・・・。」

山南は黙って桜華の言葉を聞いている。

「ここは・・・」

桜華は一息付くと・・・

「胸が締め付けられます。」

「そうですか。
 では中へ入りましょうか。」

中を見学しても桜華の中にある感情は消える事が無かった。
仙台で山南を亡くし、辿り着いた最後の地。
前世の自分は何を思って、この場所に居たのか・・・
その答えこそ、山南を救う手段に思えてならなかった。


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