Series『現桜』

□The 37th.「比翼連理」
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「ん・・・」

薄桜学園3年1組 葛木桜華は穏やかな温もりを感じつつ目が覚めた。
いつもであれば、一度寝付くと朝まで目が覚めないのだが・・・

「あれ・・・」

目の前に信じられない光景が。
男性の胸が視界いっぱいに広がり、慌てて顔を上げると、そこには眼鏡を外した薄桜学園保険医兼事務長 山南敬助の寝顔が。
その顔を見て、桜華は漸く週末に山南の家へ泊まり抱かれた後に、そのまま眠ってしまった事を思い出した。
向かい合わせで山南に抱き締められたまま、寝ている様だった。
抱かれた後、いつも非常に眠くなり、桜華は始末もソコソコにいつのまにか眠ってしまうことが多く、そのまま朝を迎えてしまう。
そして朝も大概、山南の方が先に目覚め、桜華が目を覚ます時には優しく髪を梳いている。
だから、こうして目が覚める事は非常に珍しく、また山南の寝顔を見るのは、もう何度もベッドを共にしているが初めてのことであった。
桜華は山南を起こさない様に(気配に対し、敏感なので)注意を払って、山南の寝顔を盗み見る。

『やっぱり綺麗な顔してるなぁ・・・』

眼鏡の無い顔を見たことが無いわけでは無いが、やはりジックリ見ることは少ない。
(眼鏡が無いときは、大体・・・桜華的にジックリ見れる状況じゃ無い為)
そういう意味でも、こんなにジックリと見るのは初めてである。
眠っているため、いつも自分を穏やかに見つめている赤茶色の瞳が見えない。
すっと通った鼻筋・・・薄い唇・・・山南の顔のパーツを一つ一つ見ていく。

『鼻筋いいよなぁ・・・横顔とか綺麗だし。
唇も薄い・・・あの唇が・・・』

自分の体を余すところ無く、触れたと思うと・・・
桜華は急に恥ずかしくなり、顔を伏せた。
その途端、山南の身じろぐ声が聞こえる。

「ぅ・・・。」

山南の顔を見ると、ゆっくりと瞼を上げ目が覚める所だった。


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