Series『現桜』
□The 35th.「進路(1)」
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「山南さん、ちょっといいか?」
薄桜学園教頭兼古文教師 土方歳三は、保健室の魔・・・もとい保険医兼事務長 山南敬助の元へ訪れていた。
「何ですか、土方先生。」
山南は確認中の書類から目を離さずに答える。
「一つ、相談というか・・・」
ふぅと息を吐くと、土方へ向き直りながら・・・
「君にしては歯切れ悪いですね。
一体、どうしたのですか?」
「桜華の事なんだが・・・」
「葛木君が、どうかしましたか?」
「アイツ、締め切りすぎても、進路希望を出してねぇんだよ。」
「そうなんですか・・・
で、私に相談というのは?」
「あぁそれでな、山南さん。
アイツに聞いてくれねぇか?進路の事を?」
「私が・・・ですか?」
「何度か俺から言ったんだが、桜華にしては珍しく有耶無耶でな。
まぁこういうケースの場合、普通なら家に連絡というのもありなだが、アイツは・・・」
「そうですねぇ。」
山南も2年1組 葛木桜華の事情がよくわかっていただけに、連絡を行わない(できない)理由も想像が出来た。
「わかりました。
私から話してみましょう。」
「すまねぇな。」
「いいえ土方君、態々私にありがとうございます。」
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