Series『現桜』

□The 34th.「掌中之珠(2)」
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山南は腕の中で眠る桜華の髪をそっと梳いていた。

『無理をさせてしまいましたね。』

涙の跡が残る桜華の頬・・・
山南は出来るだけ負担を掛けない様にはしたつもりだが、コレばかりは個人差がある。
自分を受け入れたまま流す桜華の涙を見て、何度止めようかと思ったが、その度に・・・

「大丈夫・・・」

そう言う桜華に甘え、結局・・・最後まで痛みを与え続けてしまった。
割と痛みには強いはずの桜華が、涙を流し耐えている所を見て、相当痛かったのだろう。
それでも最後まで自分を受け入れてくれた・・・
そんな桜華に愛おしさを募らせる。

「ぅ・・・ん・・・」

小さな呻き声と一緒に桜華の目がボンヤリと開く。

「起こしてしまいましたか?」

「・・・ん・・・だいじょう・・ぶ・・・
 それより寝てたんですね、私。」

目を擦りながら話す桜華。
少し幼い口調になっているので、そうとう眠いのだろう。

「このまま寝て下さい。
 疲れたでしょう?」

「はい・・・先生は?」

「私も寝ます。」

「うん・・・おやすみ・・・」

桜華は、そう言って山南に擦り寄る様に懐深く潜り込む。
山南も懐深く抱き込んだ。

「おやすみなさい、桜華・・・」

自分の腕の中に居る・・・

最愛の人・・・

もう二度と傷つけまいと近いながら、その温もりに身も心も委ねる様、山南も眠りに落ちた。





To be continued

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