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□授業中の彼ら
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蒼side

家庭科の実習と言うのは中々楽しい、

家事全般は苦手だが

授業中に机に座って真っ白なノートと黒板とを何度も見なくて良いのは嬉しかった。

大体、調理実習なんてものはグループでするものだから

手を抜いたところで回りが勝手にやってくれる。

回りが…というよりは主に涼が。

グループのメンバーは自分と涼に加えて沢田と山本と獄寺。

最初は男女混合の好きな人とグループを作ってよいと言われていたのだが、

自分がクラスの半数以上の女子にお誘いを受けてしまい断るのに困っていたのを、見かねた先生が

「ぁあ、もう面倒ね。男女別でやりなさい。」と言い出したのだった。

なので教室の片隅で女子の団体から離れるように縮こまっていた涼を目線ひとつで誘った後、
山本達三人に声をかけられグループが決まった。

「山本って包丁さばき、異様に良いよね」と包丁を片手に持つ爽やかな少年に声をかけると

「親父に教わったのなー」とニンジンを薔薇の形に切ってくれた。

それには沢田も驚いたようで「すごいよ!山本!」と目をきらきらさせてニンジンを見つめていた。

「じゅ、十代目!ソレくらい俺にだって!」

と対抗意識を燃やしたのは獄寺で包丁を持ってきてニンジンを切り出すが張り切りすぎて自分の指先を切ってしまう。

「獄寺君、いいから!しなくていいから!!」と焦る沢田

そんなことをしてたら、にんじんを全部使い切ってしまい、

机の上には色々な形をしたニンジンアートが並べられていた。

完全に遊んだ後である、ウサギ形だったり花だったり星だったり、見る分は楽しいが。

『お、お前らっ!何してんだよばかっ!料理作れよ!これ今期の家庭科のテストも兼ねてんだからな!』

「見てみて涼、これすごいよ」

『ぁ、クマの形可愛いっ…じゃねぇよ。野菜で遊ぶな!』

「涼、エプロン似合うね?新妻みたい」と、

涼が作っているおかずをつまみ食いしながらニヤニヤ笑うと

『ちびとか言いたいんだろどうせ…』と涼が拗ねた。


―「新妻だってー!新婚さんみたいな?」−
―「やっぱ蒼君が旦那さん?」−
―「ご飯にするー?お風呂にするー?それとも…」−
―「きゃー!!私も蒼君と新婚さんごっこしたい!」−
―「私も!いやでも涼君と蒼君の間にははいれないよっ!」−
―「もうホント夫婦だよねーっ」−


「はは…、今日も元気だよね」

『何が?』

「女の子たち」

『実習だからテンションあがってるんじゃ?

「彼女たちの場合平常運転というか…」

『ふぅん?ぁ、お前の分の料理少な目のほうがいい?』

「なんで?」不思議そうな顔をしながらおかずのをつまみ食いしようとする蒼の手。

涼は軽く叩いて止める。

『どうせ女子からたくさんもらうじゃん』

蒼君がんばって作ったの!食べてー!とか何とか言われて蒼は知らない女子にまでクッキーやら何やらを渡されることが多い。

今日もきっとそうなるはず。と言いたいらしかった

「減らさないで、むしろ多くしといて。お腹減ってるんだ」

『食いすぎるとお腹壊すぞ?』


―「あ、あれはやっぱりあれですか!」−
―「涼君の作った料理ならいくらでも食べれる!って言うアレ!」−
―「愛されてるー!!」−


「なんか、蒼君と涼君が揃うと女子が騒ぎ始めるよね…」

乾いた笑い顔を沢田が浮かべた

「ははっ、楽しそうなのな!」

相対して山本は楽しそうな笑い

「なんかもう山本いつもそう言うけど山本もたまに含まれてるからね!?女子の会話の中に!」

「そっかー?」

「十代目ぇええ!俺も出来ましたよ!薔薇!」

「獄寺君、血!血でてるから!も、もうしなくていいよ!?それ何本目のニンジン!?」

そんなこんなでやっとできた料理は

和風ハンバーグとお味噌汁とご飯とポテトサラダ、

大量に切ってしまった芸術的なニンジンは味噌汁に入れたりポテトサラダに混ぜたりした。

今日の調理実習が「好きな料理を作ろう」で本当に良かったと思う。

『なんか、普通に家で料理するより疲れた…』

「そりゃ五人分だし、全部涼が作ったしね」

『ちょっと作りすぎちゃったな』

「涼は料理が得意なのな!」

「本当にすごいよ、俺こんな風に料理できないし…」

『ツナはご飯炊いてくれたじゃん!俺だって人並みにしかできないよ』と

嬉し恥ずかしそうな顔をした涼は単純に褒められて喜んでいるようだった。

「手伝うって言ったのになぁ」と蒼が言うと

『お前は家事全般の事禁止だから!』と即答される。

『で、どう?』と少しそわそわした様子で聞かれ「おいしいよ、全部。」と返す。

『そっか、よかった…っ』と頬を赤らめて笑う涼。

「…っ(やば、可愛い)」

口元を片手で隠しながら顔をそらすと涼が『どうしたー?』と聞いてくる


―「ちょっ、あそこだけ雰囲気違うよ!なにあれマジ新婚さん!」−
―「涼君のはにかみ可愛い!てか珍しく涼君照れてるよ!やば!」−
―「写メ!みんな写メらないと!もう何あそこ天国かー…」−


「…本当、毎日食べたいくらい美味しいよ」

突然。

蒼が優しそうな顔で涼に笑いかけると、調理実習室の女子がいつもより一層大きな悲鳴を上げたのが聞こえた


―「きゃぁああ!」−
―「ど、どうしよう!あれは!あれは!もう!」−
―「ぁ、あああれよね!これはもはや!」−
―「「「プロポーズじゃん!」」」−
―「毎日食べたいって!」−
―「ガチなの!?もう本当にガチなの!?」−

一瞬固まった涼がはぁ、と溜息をついて『毎日って、弁当でも作れって?』と聞く

「あー…、それいいかも」

『たまーになら作ってやるよ、たまになら…て、何笑ってんの?』

「っふ、いや…っもう、なんか面白くて(女子が)」

『んー??』

「蒼君もしかして、てかもしかしなくても女子で遊んでる…!?涼くん気が付いてないし!」

「ハンバーグうまいのな!獄寺なんで猫の形したニンジン避けてんだ?嫌いなのか?」

「コレはだな!十代目が自ら刻んだ犬の形したニンジンだ!そんなほいほい食えるか!」

「いや!?食べてよ!?」

『授業中なのに今日うるさすぎない?特に女子とか…』

「楽しんでるんだよ、色々」

『いや、楽しむのは良いけどこんなに騒いでたら風紀委員とか来そう』

「もう来てるよ」

『っえ!?』

「何、君たちそんなに群れて騒いで何してるの?噛み殺すよ」

噂をすれば蒼の幼馴染の恭弥が家庭科室の窓から小鳥と一緒に入って来た。

「ひ、雲雀さん!ひぃい」

「沢田落ち着けー」

「蒼君落ち着きすぎだよね!?」

「授業中は私語厳禁だよ」と言いながらトンファーを蒼に投げた

「俺騒いでないよ」とトンファーを素手で掴むと、

トゲが出てきて危うく刺さりそうになったので恭弥の腹を狙って遠ざける。

「…っ、どうせ君が原因でしょ」

「決め付けんなって…ぁ、ちょ、ちょっと待て」

「何」不機嫌そうな顔をして、でも一応止まった。

『(あ、蒼の話は聞くんだ)』

「暴れたら出来立てのハンバーグが駄目になる。」

2人の間には出来たてのあまったハンバーグがあった、涼が作りすぎたので置いていたもの。

「ハンバーグ…」と恭弥が呟くと、涼の肩がビクッと反応して蒼の後ろに隠れた。

「恭、ハンバーグ食べる?好きじゃなかったっけ」

『蒼っ!そんな俺が作ったのなんかじゃ恐れ多くて…っ』

困惑した表情を隠せない涼とハンバーグを交互に見つめた恭弥は一言「食べる、箸」と言った。

「はいよー」

これにはクラス全員が驚いた(涼以外)、まさか食べるの?と。

『食べるの!?だ、大丈夫!?まずくて俺のこと噛み殺すとかしない!?』

恭弥に「まずいの?」と首をかしげて聞かれたので涼もおもわず『ぇ、ぁっ、わかんない、です…?』と首をこてんとかしげた

蒼は「大丈夫だって、俺食べたけどおいしかったし」うんうん、と首を縦に振りながら自分の席に座って食べ始める。

「おいしいのなー」と暢気に山本は箸を動かし、

獄寺は真剣な顔をして沢田が切ったニンジンを口に運んでいた。

残る沢田と涼は「こいつら、マイペースだな…」と思わずつぶやく。


―「嫁の手料理を自慢したかったのかな?」−
―「そうかも?」−
―「てか、雲雀さんハンバーグ好きなんだ。ファンクラブの子に教えてあげよ!」−
―「すげぇ、あの雲雀さんがこんな人の多いところで食事をっ…!」−


小声でクラスメイトが囁きあってこちらを見守っている。

「恭弥どう?」

『っひ、聞くなよそんなこと!怖いじゃんか』

「…」

「恭弥?」

「食べられる」

『っ!!』

あはは恭弥らしい言い方だなぁ、と笑った蒼を無視して恭弥は黙々とハンバーグを口の中に入れた。




そんなある日の家庭科の授業




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