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□プロローグ〜日常〜
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涼side

補習だ、久しぶりの補習。

隣には野球少年、
その少年の隣にはその友達とその友達の部下(?)

要するに山本と沢田と隼人だ。

教室には他に数人のクラスメイト、
補習ではないが残って係りの仕事を片付けているらしかった。

中でも女子グループが何か集まって話している。

窓際の席に座って先生にもらったプリントを見つめるが、
数学のわけの分からない文字の羅列にクラクラする。

なんだこれ。

今回の補習は幸いなことに数学だけ、と安心したが

こんなプリントを目の前に出されては解ける気もしないし解く気も起きない。

『帰りたーい』と呟くと山本が「早く部活いきてぇのなー」とぼやいた。

沢田は隼人に勉強を教えてもらっているが、山本と自分は放置されている。

『先生どこいったの』

「部活の指導しにいくってよ」

はぁ、と溜息しか出ない。

ためしに問題の解き方のヒントでも得ようかと教科書を開くがそれも何だかけだるくて。

窓の外を見れば蒼が女の子と二人でベンチの前で喋っていた、告白されているのだろうか。

座ればいいのに…と思っていたら蒼がなんだか、すまなさそうな顔で女の子に謝っている風だった。

遠めで分かるほど女の子は落ち込んでいる、告白断ったのかな。

そこへ学ランの少年がやってきた、ぁあ怖い、鬼の風紀委員だ。

彼は何かと蒼に絡んでは勝負を仕掛けている、

蒼もなんだかんだ言って付き合っているので嫌ではないらしい。

そもそも二人は古くからの知り合いで長い付き合いだから気が知れている。

自分と蒼は知り合ってまだちょっとなので羨ましい…

『って、いやいや今の考えはおかしい。なんだ羨ましいって』

「涼、解けたか?」

山本が不思議そうな顔をして聞いてきた。

『ん、いや全然わけわかんないよこの問題』

「後で獄寺に教えてもらうのなー」

『教えてくれるのかな…』

隼人をちらりと横目で見ると嬉しそうに「十代目!ここはですね!」と沢田専用の教師をしている。

もう一回窓の外を見ると、雲雀さんのトンファーからチェーンがぶら下がっていて
ソレで蒼に攻撃を仕掛けているようだった。

蒼は女の子を守りながら雲雀の攻撃を避ける、女の子の目はもう蒼に釘付け。

そういうことしてるから、
王子様とかいわれちゃって沢山の女の子に言い寄られては呼び出されの繰り返し。

蒼が女の子に何やら言うと、女の子は校舎の方に駆け出す。

逃がしたらしい。

雲雀さんがニヤっと笑ってまた一段と楽しそうにトンファーを構える、


彼は言わずもがな戦闘マニア。

『暴力的だなぁ』

「っお、雲雀じゃん。相手は蒼なのな」

『良くやるよな』

いつのまにか山本が前のイスにこちらを向くように座っていて、1つの机を2人で使う形となった。

机には二人分の答案用紙、埋まり具合はどっちもどっちでこのままでは先生に怒られそうだ。

数分各自黙って解いてみる、

『もしかしてこの問題こうかも…ぁ、解けた』

「こっちこの問題と同じなのな」

『まじ?教えて教えて』

「涼もな」

案外解けるかもしれない、そう思っていたときにある事に気が付いた。

『山本、手でかいな』

「そうか?ぁ、涼手だしてみ?」

相手と自分の手のひらを合わせてみるとサイズがまったく違った、なんとなく悔しい。

『そういやさ』

重ねた手の先を少しずらして山本の指と指の間に自分の指を入れ込み、相手の手のひらを握った。

ぎゅっ

…と、効果音が付きそうな、それは恋人つなぎに似ている。

『これ男女でやったら男子がきゅんってするんだってさ!』

「ははっ、面白いのな」

―「ひゃぁ、今日は山本君と絡んでる!山本君×涼君だぁっ」−

―「あの手っ!あー、やばい萌えるっ」−

―「どっちも天然のカップルじゃん」−

女子の声がきゃっきゃと聞こえた、何言っているか分からない…悪口か?

俺の悪口はいいけど、まさか山本のじゃないよな?

こんないいやつの悪口言うの?

女子って怖い!

眉をハの字にしていたら山本に顔を覗き込まれた

「大丈夫かー?」

『ぎゃっ』と、びっくりして変な声を出したら山本が笑う

「おめーら、うるせぇ!十代目が集中できねぇだろうが!」

隼人が怒った、沢田は苦笑いしてる

―「獄寺君が怒った!嫉妬かなぁ♪」−
―「えー、どっちに?」−

女子のヒソヒソ声が微かに聞こえる中。

『ごっめーん』と声だけで謝ると隼人はケッと悪態を付いて沢田の方を向いてまた教師に戻った。

そろそろ手を離そうとして山本の方に目を向けると彼は「あ」と何かに気が付いたような顔をした。

何?と口を開くその瞬間、首回りに誰かの腕が回される。

『うぁっ!?』

「なーに浮気してんの?涼」

『はぁ!?何がだよ?蒼、お前さっき外に居ただろ、雲雀さんはどうしたんだよ』

―「ぁあ!もう本命が来た!」―
―「安定の旦那だねー」−
―「しかも分かりやすい嫉妬付だよーw」−

補習の時間なのに女子がうるさい、誰かの恋バナでもしてんのかな?

するなら外ですればいいのに…そんな事を考えていると、

蒼が苦笑いを含んだ顔で「ぁー、恭なら巻いてきた。しかもトンファー改良しててさ、危ないよね」と笑う。

耳元で喋るのでくすぐったい。

『怪我は?』

「ないよ」

『ふーん』

―「嫁の怪我チェック!」−
―「旦那愛されてるーっ!」−
―「怪我してたらしてたで丁寧に自分が手当してあげるんだろうね!」−

女子の会話は夫婦の会話についての話に変わったらしかった、

まだ中学生なのに結婚とか夫婦とか考えてんだな、ませてら。

『ないなら、この数学教えろよ。早く帰りたいのに問題が解き終わらない。今日スーパーの特売日なのに…』

早くスーパーに行ってじいさんの飯作って、バイトいかなきゃなんだよ、と付けくわえる。

「っふ、はいはい。どこ?山本も一緒に教えてあげるよ」

「さんきゅ蒼!」

『この前のテスト学年三位?だったろ』

「ぁ、知ってた?自慢しようかと思ったのにな」

『別にたまたま順位表が目に入っただけだし…』

―「ああーっ!ツンデレ!やばい!絶対名前探したんだよ!」−
―「素直じゃないなぁw」−
―「旦那、嬉しそうwwバカップルww」−

終始女子のグループ会話は楽しそうで、でもうるさかった。

そんな中で数学のプリントを終わらせて(解いてもらって)、

その日はやっとの事で帰り支度ができたのだった。






涼は気が付いてないけど、クラスの女子は腐女子さん。


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