ZSの部屋
□たまにはこんな穏やかな日
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天気の良い穏やかな海。敵の気配も島の気配もまだない海の中を船は進んでいた。
サンジはいつものようにおやつ(今日はアンドーナツ)を作り、レディ達に給仕して。欠食児童達にばら蒔いて。
何度言っても現れないゾロの所に2人分のおやつを持って行く。
いつもの場所で。
いつものように。
胡座をかいて寝てるゾロがいる。
「よくもまぁ、こんなに寝られるもんだ」
ゾロの正面に屈み込んでその顔を覗き見る。
(ガキみてぇ)
気持ち良さそうに眠っている顔は、穏やかで普段より少し幼く見えて。
サンジの顔がふわりと綻ぶ。
「おい、起きろ」
声をかけたくらいでは勿論起きない。
「お〜い、マリモ君。おやつの時間ですよ」
マリモ、の所でゾロの眉間にシワが寄った気がして。
起きたかと思ったが目を開ける気配はない。
いつもなら蹴り起こす所だが、今日はなんだかそんな気にはなれなかった。
春の中頃のような、程よい気候。空は真っ青で。潮風が優しく吹いていて。
こんな日は時間の流れ方も気持ちも穏やかだから。
「仕方ねぇな」
サンジはゾロの左隣に腰を降ろして空を見上げた。
雲がゆったりと流れて行くのを見ながら、眠っているゾロの肩に自分の頭を凭れ掛けさせる。
サンジの頭の重みにゾロの身体が一瞬動くが、サンジの耳元に聞こえるゾロの寝息はまだ途絶えない。
(…前なら最初の一声掛ける時には起きてたよなぁ)
サンジがこの船に乗ったばかりの頃からゾロはこの場所で昼寝をしていたが、その頃はサンジが近づくだけで目を覚ましていた。
それが声を掛けるまで起きないようになり、声を掛けても起きないようになり…。
今では力付くで蹴り起こす有り様だ。
それを面倒だと感じた事もあったが、自分の気配を仲間と認めて、警戒を解いて眠っていると思えば嬉しくもある。
ただ、こうして身体を触れ合わせても自分の気配に目覚めてくれないのは恋人としては少し寂しい気もするが。
(…なんだかなぁ。)
嬉しいような、寂しいような。…でも。
それは不快じゃなくて。
ゾロを間近で見つめると。
「…好きだぞ」
自然と言葉が溢れて。眠るゾロの頬に軽く唇を触れさせていた。
そんな自分の行動に1人頬を染めながらもサンジは笑いながらゾロの肩に顔を寄せて目を閉じた。