ZSの部屋
□告白
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@ Side サンジ
「………」
真っ直ぐに目を合わせたのはもしかしたら初めてかもしれない。
この男は敵を対峙する時、きっとこんな風に真っ直ぐに相手を見据えて、捕らえて、離さないんだろう。
…、イヤ、俺は敵じゃないんだが。
無茶苦茶長い時間が経ったようにも思ったが、きっとアイツが放った言葉からは多分、まだ2、3秒くらいしか経っていない。
いつもなら、間髪入れずに悪態を付いている俺だけど、今はなんの言葉も出て来ない。
どうしていいのか分からなくなって。でも、何か言わないと、と焦る俺からは、
「いや、いや……あの、いや。えっ? あ〜、その…う〜」
もはや言葉として意味をなさない音だ。
「あ〜、そうだ。落ち着け。そう、そうだ。その方がいい」
「お前が落ち着け」
静かな声だった。…こんな声も出せる男だったんだ。
そして。俺は結局何も言えなくなってしまった。
正面に真っ直ぐ立つ男と目を合わせている事すら怖くなって。
無言のまま、目を逸らし俯いてしまった。
「答えて貰おうとは思っちゃいねぇ」
これも、また静かな声だ。
「気付いちまったら、我慢できなくなっただけだ」
「………」
「知っといてくれればいい。俺がお前に惚れてる事」
「!!!」
怒っている風でもなく、悲しんでいる風でもなく。
声音と同じように穏やかな表情のままで。
言いたい事は言った。もう何もない。
とばかりに、俺に背を向けてキッチンから出て行こうとする。
このままだと変ってしまいそうで。
コイツとの今までの関係が。これからの関係が。
それが怖くて。何だか分からないけどすごく怖くて。
「…お前の頭はマリモじゃなくて」
俺の声に反応するように男は立ち止まる。
「実はカビが生えて緑なんじゃないか?…頭の中にまで……」
俺達の間ではいつもの悪態。
もしかしたら、、まだマシな域に入るかもしれない言葉だったのに、
振り返ったヤツの表情はいつもとは違っていた。
「……」
言い過ぎた。瞬時にそう思ったが、もう取り消す事は出来ない。
「あ、あのさ、今のは、無かっ……」
「無かった事にはするな」
俺の言葉を遮って、言い切る。