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□白雪姫の国
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ずっと海岸線を歩くのも危険だということで、2人は東へ進路をとることにした。行く手には大きな城、その背後にうっそうとした森が広がっている。

クロはさきほどから、横目で隣にいる少女をちらちらうかがっているのだが、見られている当人はどこ吹く風、楽しげに歩を進めている。

思い返しても、自分の行動が恥ずかしくってたまらない。クロはその場にしゃがみこんでしまいたい衝動をやっとのことで抑えていた。なぜ、あんなことを。よりにもよって、カラコに。

かといってあれが嘘だったかというと、そうではない。全くの本心だった。クロは人間になりたいのだ。思えばずっと昔からそうだった気がする。自分の故郷を飛び出したのも、なんとか人に関わろうとしたのも、人の中身を喰い奪ってしまおうというのも。全部全部、人間になりたいがためにしていた行動ではなかったか?

それはそれとして、カラコもカラコだ。目の前で大きな鳥に変身した自分を軽蔑するどころか、まるでなかったこととしてクロに接してくる。そりゃあ犬だの何だのに変身した姿自体は見られていたのだから、とはいえ、一度霧散した姿が再度生き物の形を作るさまは、自分でも化け物じみていると思う。それを一切気にしないとは、馬鹿なのか器がでかいのか。どっちだ。

クロが悩んでいる間にも、二人は大きな城に近づいていく。近づけば近づくほど、そこの城下町が栄えたものだということがわかってくる。二人が最初に訪れた、シンデレラの街に引けをとらないほどだ。がぜん、カラコは活気づいた。

「クロさん! クロさん! 大きな街ですねえ!」
「あー、そうだな」

大きい街はめんどくさい、そんな気持ちを隠そうともしないクロの手を、カラコはとった。

「行きましょう! 今度こそ、弟がいるかもしれません」

弟のことは忘れていなかったんだなと思うと同時に、そりゃそうだ、カラコがわざわざ俺なんかと旅しているのも弟を探すためだったんだからとの声がする。なんだか気分が落ちつかない。苛立ちと落ち込みが募る。さらに、自分の心境の変化にも落ちつかなかった。

そしてふいにひらめく。弟が見つかれば、ここでカラコとは別れるのか? たぶんそうなるだろう。二度と会うこともないかもしれない。

そう考えると、街へ向かう足がますます重くなるクロだった。
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