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□はなさかじいさんの村
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作戦会議のため、3人は場所を移した。
どこからか拾ってきた棒を用いて、少年は自ら考案した段取りを地面に描いた。ひとつずつ指しながら説明していく。
「いい? さっきも言ったけど、おれはおじいさん役。そして君は……白いワンコのシロ役だ!」
ビシッとクロを棒で指したが、言われたほうは小バカにしたような表情のままぴくりともしなかった。
「俺は黒犬だぞ」
「わかってるよ。しょうがないじゃないか」
クロはやれやれと頭を振った。
「それで、私は何をしたらいいのでしょう」
1人わくわくした様子のカラコが意気込んでいる。少年は棒を振り回しながら思案した。
「そうだなあ。最後の場面で花吹雪を散らしてもらおうかな。どう?」
カラコは鼻息も荒くうなずいた。
「素敵なお役目をありがとうございます!」
「……うん、頼むよ。ここにおれが用意した紙吹雪用の紙があるんだ。ちぎってもらってもいい?」
「もちろんです」
少年から紙を受けとり、カラコはその場に座ってちまちまと紙吹雪を作りだした。その間に少年とクロは話を続ける。
「このシロはとっても不思議なワンコで、おじいさんが豊かになれるよう色々と手助けするんだ。例えば……」
そう言って少年は地面に絵を描き足した。畑の上で、犬が鳴いている場面だ。
「シロが鳴いたところを掘れば金銀小判がざっくざくーってね」
「ほー、それはすごいな」
「でしょ?」
少年は胸を張った。
「なんでお前が威張るんだよ」
軽く笑ってごまかした少年は、クロに演技指導を始めた。
クロも大人しく従っていたのだが、少し休憩している時にどうしても気になることを少年に投げかけた。
カラコはまだ紙吹雪を作り続けていた。
「どうしてお前はシロとじいさんの関係にそんな詳しいんだ?」
「いつもおじいさんから聞いていたんだ。おじいさんは、本当に、シロを愛してくれたんだよ」
少年は虚空を見つめ、クロに言うでもなく、つぶやいた。