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□はなさかじいさんの村
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教えられた村に着いた。カラコとクロは人を探しながら歩いて行く。
「弟は一体何のために旅をしていたんでしょうか」
歩きながらカラコがぽつりとこぼした。
「さあな。人助けでもしたかったんじゃないか」
クロはそっけなく答え、犬の姿のままカラコの先を行く。
「そうですね。弟は、人の役に立つことが好きでしたから」
「お前だってそうだろ」
返って来たのは弱々しい笑みだった。
「私はからっぽですから、いつも弟のようにうまくはいきません」
クロはふいに振り返った。
「そんなことない。お前、今までがんばってきたと思うぞ」
そこでハッとして、クロは言葉を付け加えた。
「ま、そこそこだな。そこそこ」
しかしカラコはぐっと元気になって、クロに笑いかけた。
「ありがとうございます」
クロは口をとがらせた。
2人はそんな風に会話しながら歩いて行ったのだが、カラコの影響だろうか。クロはすっかり警戒心がなくなっていた。
そのせいで、後からつけてくる人影にも、2人は全く気づかなかった。
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