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□瓜子姫の村
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「さて、それじゃあここから俺は別行動だ」
これ以上毒気を抜かれてはたまらない。クロはふと思い立って、カラコにそう告げた。当然カラコは驚く。
「どうしてですか? やはり、手伝ってくださるのが嫌になったんですか」
半分その通りだ。だが弟は喰いたい。
「違う。2人いるならそれぞれ情報収集したほうが早いだろ」
「そうでしたか!」
途端にカラコの顔が明るくなった。
「さすがクロさんです。全然思いつきませんでした」
「そうだろそうだろ」
褒められて悪い気はしない。思いつきで言ったクロだったが、すっかり得意になってふんぞりかえった。
「じゃ、行くからな。悪い奴に騙されんなよ」
「はい。心配してくださってありがとうございます」
「バカコ、別にお前を心配してるわけじゃない」
自分もカラコを騙しているということは棚に上げて、クロは大通りをはずれた路地にすっと入っていった。途中で立ち止まり振り返ってカラコが無事通り過ぎて行くのを見守ってから、体を揺らした。
再度霧に戻ったクロの体は小さくまとまっていき、真っ黒いカラスに姿を変えた。
カラスになったのは正解だったかもしれない。くちばしで羽を整えて、ふいに思う。
あのまま好奇の目にさらされていたら、自分が『なんでもないもの』だと気づく奴がいたかもしれない。そこまで行かずとも、人間ではないとバレる可能性はあった。そうなると非常に都合が悪い。
クロは確かめるように翼を2、3回羽ばたかせると、空に舞い上がって行った。