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□瓜子姫の村
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▽本章では「瓜子姫が単にあまんじゃくへ軽い罰を与え、無事に嫁いだ」版の「瓜子姫とあまんじゃく」を下敷きにしています。

シンデレラの馬車に送られて着いた村は、最初の街とずいぶん違っていた。

土のままむき出しの道路に、木で簡単に建てられた家々。それらは道沿いに行儀よくならんでいて、賑やかながらどこか落ちついた雰囲気を村に与えていた。

カラコとクロは村の様子を眺めつつ大通りを歩いていった。カラコは純粋に興味から、クロは警戒から。

よく見れば村人の格好も2人のそれとは大きく異なっていた。上から羽織ったものを襟もとで重ね、腰のあたりの帯で締めている。

逆に言えば村人たちには2人の格好が変に見えたということだ。2人の通る道々、軒先や店から好奇心の詰まった視線が感じられた。

「だから人間は嫌なんだよ、裏でこそこそと……」

クロは余程視線が気になるらしい。威嚇するように目をつりあげた。

「クロさん、何か言いました?」

「別に」

そっけない返事だったのに、カラコは笑いながら両手でガッツポーズをつくった。

「馬車の御者さんが、ここを真っすぐ行けば領主さまのお屋敷に辿りつくって教えてくれたんです。今度こそ弟が見つかるといいんですけれど」

「領主? なんでだよ」

「ここの領主さまは優しいので、きっと旅人でも泊めてくれるって聞きました。一番情報が集まっている場所だから弟も探しやすいだろうって」

なるほど、カラコがやたら御者と話しこんでいたのはこのためだったのかとクロは得心した。しかしカラコを素直に褒めたくはない。

「お前にしては、まあやるな」

「ありがとうございます」

嫌味のつもりで言ったはずが嬉しそうに微笑まれてしまった。やっぱりこいつは扱いづらいと、クロはそっぽを向いた。
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